債権法改正 要綱仮案 情報整理

第35 請負

2 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任
(1) 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の修補請求権(民法第634条第1項関係)

 民法第634条第1項の規律を次のように改めるものとする。
 仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、目的物の修補を請求することができる。

中間試案

2 仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の請負人の責任
 (1) 仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の修補請求権の限界(民法第634条第1項関係)
   民法第634条第1項の規律を次のように改めるものとする。
   仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合には,注文者は,請負人に対し,相当の期間を定めて,その修補の請求をすることができるものとする。ただし,修補請求権について履行請求権の限界事由があるときは,この限りでないものとする。

(概要)

 仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合における注文者の修補請求権(民法第634条第1項)に関して,その限界を定める同項ただし書の規律を改め,売買の目的物が契約の趣旨に適合しない場合(前記第35,4(1)第2文)と同様に,履行請求権の限界事由(前記第9,2)の一般原則に委ねることとするものである。

赫メモ

 民法634条1項ただし書は、瑕疵修補請求をすることができない場合として、@仕事の目的物の瑕疵が重要でないことと、A修補に過分の費用を要することの要件を定めているが、Aは履行請求権一般について認められる要件であること、@によれば瑕疵が重要である場合には修補に過分の費用を要するときであっても修補請求が認められることになり、請負人に過大な修補義務を課すことになって妥当でないことから、要綱仮案では、民法634条1項ただし書を改め、修補請求権の限界について、履行請求権の一般原則と同様の規律とすることとしたものである(部会資料72A、5頁、部会資料81-3、18頁)。

現行法

(請負人の担保責任)
第634条 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (A=請負人,B=注文者)
【瑕疵が重大ではないが,補修に過分の費用を要する場合において,修補に必要な費用全額の賠償を認めなかった事例】最高裁昭和58年1月20日判決・判時1076号56頁
  BがAから請け負った曳船について,全速力で右方急旋回する場合に発生する振動が設計の不備に基づく欠陥であり,この欠陥を修理するためには,船体を切断して後部の船体を新造したものと取り替える工事が必要であるとして,Aがその工事費用などを損害賠償請求した。
  瑕疵が存在しているにもかかわらず,Aが他船とほぼ同一の収益をあげていたことに鑑みると,曵船の瑕疵は比較的軽微であるのに対して,瑕疵の修補には著しく過分の費用を要する(2440万円の費用,70日間の工期)ものであるということができるから,民法634条1項但書の法意に照らし,Aは曳船の瑕疵の修補に代えて改造工事費及び滞船料に相当する金員を損害賠償として請求することはできない。上告棄却(なお,原審は,請負代金3800万円の10%に相当する400万円を損害賠償として認容していた)。