債権法改正 要綱仮案 情報整理

第35 請負

2 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任
(2) 仕事の目的物が契約の内容に適合しないことを理由とする解除(民法第635条関係)

 民法第635条を削除するものとする。

中間試案

2 仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の請負人の責任
 (2) 仕事の目的物が契約の趣旨に適合しないことを理由とする解除(民法第635条関係)
   民法第635条を削除するものとする。

(概要)

 民法第635条本文は,仕事の目的物に瑕疵があるために契約目的を達することができない場合には注文者は契約を解除することができることを規定している。しかし,仕事の目的物に瑕疵があることは請負人の債務不履行の一場面であるから,債務不履行による契約の解除一般について,債務不履行によって契約の目的を達することができない場合には契約を解除することができるという規律(前記第11,1)を設けるとすると,規律の内容が重複することになる。そこで,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しないために契約の目的を達することができない場合の解除については債務不履行による契約の解除に関する一般的な規定に委ねれば足り,同条本文は不要であると考えられる。
 民法第635条ただし書は,仕事の目的物が土地の工作物である場合には,瑕疵があるために契約目的を達することができない場合であっても解除することができないことを規定している。その趣旨として,土地の工作物が目的物である場合に解除を認めると請負人の負担が大きくなることが挙げられるが,裁判例には,建築請負の目的物に重大な瑕疵があるために建て替えざるを得ない場合に建替費用相当額の損害賠償を認めたもの(最判平成14年9月24日判時1801号77頁)があり,これは,瑕疵の程度によっては,請負人が解除を認めたのと同様の負担を負うべき場合があることを前提したものであると言える。また,同条ただし書の趣旨として,解除を認めて土地工作物を撤去することは社会経済的に損失であることも挙げられるが,注文者の下に,契約目的を達することができない程度に重大な瑕疵がある工作物があったとしても,それが有効に利用されることを期待することは現実的ではない。このように,同条ただし書は必ずしも合理的な規律ではない。
 以上から,民法第635条を削除することとしている。

赫メモ

 中間試案からの変更はない(中間試案概要、参照)。

現行法

第635条 仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (A=請負人,B=注文者)
【重大な瑕疵あり建物を建て替える以外に方法がない場合には,建物の建替費用相当の損害賠償請求が可能である】最判平成14年9月24日判決・判時1801号77頁
 全体に多数の欠陥個所があり,主要な構造部分について安全性耐久性に重大な影響を及ぼす欠陥があり,地震や台風の振動や衝撃を契機として倒壊しかねない危険性を有する建物(請負代金4350万円,三世帯居住の2階建て住宅)について,建替費用(3440万円),建替えに伴う引越費用等を請求した事例。
 請負人が建築した建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかない場合には,当該建物を収去することは社会経済的に大きな損失をもたらすものではなく,建替費用を負担させることは契約の履行責任に応じた損害賠償責任を負担させるものであって,請負人に過酷であるとはいえない。