債権法改正 要綱仮案 情報整理

第35 請負

2 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任
(4) 仕事の目的物である土地工作物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任の存続期間(民法第638条関係)

 民法第638条を削除するものとする。

中間試案

2 仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の請負人の責任
 (4) 仕事の目的物である土地工作物が契約の趣旨に適合しない場合の請負人の責任の存続期間(民法第638条関係)
   民法第638条を削除するものとする。

(概要)

 前記(3)について甲案を採ると,担保責任についての短期の期間制限が廃止されて消滅時効の規律に委ねられることになるが,契約の趣旨に適合しない目的物が土地の工作物である場合について,注文者の権利の存続期間を一般的に消滅時効期間よりも長くする必要性は乏しいと考えられる。また,乙案を採る場合には,制限期間の起算点が,目的物が契約の趣旨に適合しないことを注文者が知った時となるが,目的物が土地の工作物であっても,契約の趣旨に適合しないことが注文者に明らかになった以上,通知期間を他の一般的な場合に比べて長期のものとする必要性は乏しい(民法第638条第2項参照)。以上から,民法第638条第1項を削除することとしている。
 民法第638条第2項は,土地の工作物が滅失などしたときは注文者にとって瑕疵の存在が明白になることから同条第1項の制限期間を短縮したものであるが,前記(3)について乙案を採る場合には,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の注文者の権利一般について同条第2項と同様の趣旨に基づく規定が設けられることになるから,同項の規定は不要になる。他方,前記(3)について甲案を採るときは,消滅時効一般について権利者の認識に着目した起算点の考え方(前記第7,2の乙案)が取り入れられるのであればそれによれば足りると考えられ,消滅時効一般についてその考え方を取り入れないのであれば,それにもかかわらず土地工作物の瑕疵に基づく担保責任についてのみ注文者の認識に着目した起算点の考え方を取り入れる必要はないと考えられる。そこで,同項も削除することとしている。

赫メモ

 中間試案からの変更はない(中間試案概要、参照)。

現行法

第638条 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後五年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、十年とする。
2 工作物が前項の瑕疵によって滅失し、又は損傷したときは、注文者は、その滅失又は損傷の時から一年以内に、第六百三十四条の規定による権利を行使しなければならない。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり