債権法改正 要綱仮案 情報整理

第39 組合

4 組合員の持分の処分等(民法第676条関係)

 組合員の持分の処分等について、次のような規律を設けるものとする。
(1) 組合員の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができない。
(2) 組合員は、組合財産である債権について、その持分についての権利を単独で行使することができない。

中間試案

3 組合の財産関係(民法第668条ほか関係)
 (1) 組合の財産関係について,民法第668条,第674条,第676条及び第677条の規律を維持した上で,次のような規律を付け加えるものとする。
  ア 組合員の債権者は,組合財産に属する財産に対し,その権利を行使することができないものとする。
  イ 組合員は,組合財産に属する債権について,自己の持分に応じて分割して行使することができないものとする。

(注)上記(1)アについては,このような規定を設けるべきではない(解釈に委ねる)という考え方がある。

(概要)

 本文(1)アは,組合員の債権者は,組合財産に属する財産に対して権利行使をすることができないとするものである。組合員が組合財産上の持分を処分することを禁じている民法第676条第1項の趣旨から,一般に,組合員の債権者が当該組合員の組合財産上の持分を差し押さえることはできないと理解されていることを踏まえたものである。もっとも,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律や有限責任事業組合契約に関する法律などの団体法理に関する制度の整備が進んだ現在において,公示機能なしに組合財産の独立性を強調する規律を明文化することには慎重であるべきであるとする考え方があり,これを(注)で取り上げている。
 本文(1)イは,組合員は,組合財産に属する債権を,自己の持分に応じて分割して行使することができないとするものである。組合財産に属する債権の債務者がその債務と組合員に対する債権とを相殺することを禁じている民法第677条は,一般に,組合財産に属する債権には分割主義の原則(同法第427条)が適用されないことを前提とするものであると理解されていることを踏まえたものである。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案(1)アイに関する中間試案概要のとおりである(表現の変更については部会資料81-3、28頁)。

現行法

(組合員の持分の処分及び組合財産の分割)
第676条 組合員は、組合財産についてその持分を処分したときは、その処分をもって組合及び組合と取引をした第三者に対抗することができない。
2 組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (AB=組合員,PQ=第三者)
@ 【組合財産に対する持分は,物権法に定める共有に制限を加えるものである】最高裁昭和33年7月22日判決・民集7巻22号1805頁
  ABらが建築技能者養成の学校経営を目的として組合を設立し,建物を建築し,A名義で保存登記をしていた。Bらが保存登記の抹消登記手続きを求めて提訴。
  組合財産が理論上は合有であるとしても,民法の法条そのものはこれを共有とする建前で規定されており,組合所有の不動産についても共有の登記をするほかはない。民法の組合財産の合有は,共有持分について民法の定める制限を伴うものであり,持分についてこのような制限のあることがすなわち民法の組合財産合有の内容だと見るべきである。そうだとすれば,組合財産については,民法667条以下において特別の規定のなされていない限り,民法249条以下の共有の規定が適用されることになる。

A 【組合に属する債権が持分に割合に応じて組合員に分割されるものではない】大審院昭和13年2月12日判決・民録17巻132頁
  ABが設立した組合に属する財産である寒天をBの関係者が無断でPに質入れし,Pはこれを善意無過失の第三者Qに売却したため,Aが組合のPに対する損害賠償請求権のうち,自己の持分に相当する割合分の支払いを求めた。
  民法上の組合財産は668条により組合員の共有に属するため,第三者が不法に組合お所有物を侵害したときは,これによって生じた損害賠償の債権も組合財産として同じく供給に属すべきことは当然にして,この債権は持分の割合に応じて組合員に分割されるものではなく,ただ,総組合員の合意により,又は組合解散の場合には清算の一方法として組合員に分割されることがありえるに過ぎないことは,民法676条,688条の規定より明らかである。

B 【組合に属する債権は,総組合員により行使しなければならない】最高裁昭和41年11月25日判決・民集20巻9号1946頁
  ABが定置網業を営む組合契約を締結し,Aは定置漁業権を組合Aに出資した。組合Aは,Pに対し捕獲した魚類を売り渡し,その代金を請求した。
  組合は法人格を有しないから,組合員全員において物件を第三者に売り渡した場合はもちろん,組合代理権を有する1名の組合員が組合の名義で売買行為をした場合においても,売主として第三者に対し代金債権を取得するのは組合員全員である。ただ,当該債権は,組合債権であるから,民法668条にいう総組合員の共有に属し,総組合員によらなければこれを請求しえないものにすぎない(一般論である)。