債権法改正 要綱仮案 情報整理

第39 組合

6 業務執行者がある場合における組合の業務執行(民法第670条第2項関係)

 民法第670条第2項の規律を次のように改めるものとする。
(1) 組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができる。
(2) (1)の委任を受けた者(以下この6及び7において「業務執行者」という。)は、組合の業務を決定し、これを執行する。この場合において、業務執行者が数人あるときは、組合の業務は、業務執行者の過半数をもって決定し、各業務執行者がこれを執行する。
(3) (2)の規定にかかわらず、総組合員の同意によって組合の業務を決定し、又は執行することは、妨げられない。

中間試案

4 組合の業務執行(民法第670条関係)
  民法第670条の規律を次のように改める。
 (2) 組合の業務執行は,組合契約の定めるところにより,一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができるものとする。
 (3) 上記(2)の委任を受けた者(業務執行者)は,組合の業務を決定し,これを執行するものとする。業務執行者が二人以上ある場合には,組合の業務は,業務執行者の過半数をもって決定し,各業務執行者がこれを執行するものとする。
 (4) 業務執行者を置いている場合であっても,総組合員によって組合の業務を執行することは妨げられないものとする。
 (5) 上記(1)から(4)までにかかわらず,組合の常務は,各組合員又は各業務執行者が単独で決定し,これを執行することができるものとする。ただし,その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは,この限りではないものとする。

(概要)

 本文(2)から(4)までは,民法第670条第2項の規律を改めるものである。このうち,本文(2)は,組合の業務執行者の選任に関して,組合契約で定めれば組合員に限らず組合員以外の第三者に対しても業務の執行を委任することができ,また,その委任の方法は組合契約で定めるところに従うという一般的な理解(大判大正6年8月11日民録23輯1191頁参照)を明文化するものである。
 本文(3)は,本文(1)と同様の理由から,業務執行者の過半数によって決定された意思の実行に関しては各業務執行者が業務執行権を有するという一般的な理解を明文化するものである。
 本文(4)は,代理法理から当然に導かれる帰結として,業務執行者に業務の執行を委任した場合であっても,組合員全員が揃えば業務を執行することができることを明文化するものである。
 本文(5)は,組合の業務執行が組合の意思を決定し,それを実行するという二つの次元から成り立つものであることを明確にした上で,民法第670条第3項の規律を維持するものである。

赫メモ

 規律の趣旨は、中間試案4(2)〜(4)に関する中間試案概要のとおりである。中間試案4(5)の規律を設けることは見送られ、670条3項が維持されることとなった(部会資料81-3、30頁)。

現行法

(業務の執行の方法)
第670条 組合の業務の執行は、組合員の過半数で決する。
2 前項の業務の執行は、組合契約でこれを委任した者(次項において「業務執行者」という。)が数人あるときは、その過半数で決する。
3 組合の常務は、前二項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでない。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (AB=組合員,PQ=第三者)
【業務執行者の選定方法は組合契約によって定められる】大審院大正6年8月11日判決・民録23輯1191頁
 ABら50名で構成する講の理事1名の選任方法が争われた事件。原審は総組合員の全員一致が必要である旨判示していた。
 およそ組合の業務を執行すべき組合員は総組合員一致の合意をもってこれを定めるべきものとすることができ,又は講員多数決の方法によってこれを選定すべきものとすることも可能であり,その如何は,一つに契約の定めるところにより決すべきものであり,講則の講員の互選は理事以外講員の多数決をもって理事を選定すべき意義にして総講員の一致を要する意義ではないことは,その文詩と多数決という方法が合議体の決議方法として通則であることに徴しても疑いを入れない。