第39 組合
組合員の脱退について、次のような規律を設けるものとする。
(1) 脱退した組合員は、その脱退前に生じた組合の債務については、これを弁済する責任を負う。この場合において、債権者が全部の弁済を受けない間は、脱退した組合員は、組合に担保を供させ、又は組合に対して自己に免責を得させることを請求することができる。
(2) 脱退した組合員は、(1)に規定する組合の債務を弁済したときは、組合に対して求償権を行使することができる。
7 組合員の脱退(民法第678条から第681条まで関係)
組合員の脱退について,民法第678条から第681条までの規律を基本的に維持した上で,次のように改めるものとする。
(1) 民法第678条に付け加えて,やむを得ない事由があっても組合員が脱退することができないことを内容とする合意は,無効とするものとする。
(2) 脱退した組合員は,脱退前に生じた組合債務については,これを履行する責任を負うものとする。この場合において,脱退した組合員は,他の組合員に対し,この債務からの免責を得させること,又は相当な担保を供することを求めることができるものとする。
本文(1)は,民法第678条について,やむを得ない事由がある場合には組合の存続期間の定めの有無に関わらず常に組合から任意に脱退することができるという限度で強行法規であるとする判例法理(最判平成11年2月23日民集53巻2号193頁)を明文化するものである。
本文(2)第1文は,組合員が脱退した場合であっても,その固有財産を引当てとする責任は存続することを定めるものである。組合の債権者は各組合員の固有財産に対してもその権利を行使することができるとする民法第675条との関係で,脱退した組合員が脱退前に生じた組合債務について自己の固有財産を引当てとする責任を負い続けるかどうかが明らかでなかったことから,この点に関する一般的な理解を明文化するものである。他方,脱退した組合員が脱退前に生じた組合債務について自己の固有財産を引当てとする責任を負い続けるとしても,組合は,その組合債務を履行したり,債権者から免除を得たりするなどして,脱退した組合員の固有財産を引当てとする責任を免れさせるか,相当な担保を供して脱退した組合員が不利益を被らないようにしなければならないと解されている。本文(2)第2文はこれを明文化するものである。もっとも,脱退した組合員に対する持分の払戻しに際して,その組合員が固有財産を引当てとする責任を負うことを考慮した計算がされていたような場合には,別段の合意があると考えられるので,本文(2)第2文は適用されない。
要綱仮案(1)の規律の趣旨は、中間試案(2)に関する中間試案概要のとおりである。
要綱仮案(2)は、要綱仮案(1)第二文の考え方から当然に導かれるものであるが、パブリック・コメントにおいて明文化すべきとの指摘が寄せられたことから、設けられたものである(部会資料75A、54頁、参照)。
中間試案(1)の規律を設けることについては、パブリック・コメントにおいて複数の反対意見が寄せられたため、見送られた(部会資料75A、55頁)。
(組合員の脱退)
第678条 組合契約で組合の存続期間を定めなかったとき、又はある組合員の終身の間組合が存続すべきことを定めたときは、各組合員は、いつでも脱退することができる。ただし、やむを得ない事由がある場合を除き、組合に不利な時期に脱退することができない。
2 組合の存続期間を定めた場合であっても、各組合員は、やむを得ない事由があるときは、脱退することができる。
(AB=組合員,PQ=第三者)
@ 【やむをえない事由がある場合の脱退を制限する合意は無効である】最高裁平成11年2月23日判決・民集53条2号193頁
Aらが1口100万円,合計1400万円を出資してヨットクラブ(民法上の組合)を結成しヨット1台を購入したが,ヨットに関する費用負担で紛争となり,Aはこのクラブから脱退して2口200万円の返金を求めた。ヨットクラブの規約では,オーナー会議で承認される相手方に会員の権利を譲渡する方法によってのみ脱退できる旨定められている。
民法678条は,組合員は,やむを得ない事由がある場合には,組合の存続期間の定めの有無にかかわらず,常に組合から任意に脱退することができる旨を規定しているところ,この旨を規定する部分は強行法規であり,これに反する組合契約における約定は効力を有しないものと解するのが相当である。なぜなら,やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約は,組合員の自由を著しく制限するものであり,公の秩序に反するからである。