債権法改正 要綱仮案 情報整理

第4 代理

2 代理行為の瑕疵−例外(民法第101条第2項関係)

 民法第101条第2項の規律を次のように改めるものとする。
 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

中間試案

2 代理行為の瑕疵(民法第101条関係)
  民法第101条の規律を次のように改めるものとする。
 (3) 本人が知っていた事情について,本人がこれを任意代理人に告げることが相当であった場合には,本人は,任意代理人がその事情を知らなかったことを主張することができないものとする。
 (4) 本人が過失によって知らなかった事情について,本人がこれを知って任意代理人に告げることが相当であった場合には,本人は,任意代理人がその事情を過失なく知らなかったことを主張することができないものとする。

(概要)

 本文(3)(4)は,民法第101条第2項の規定を,本人が知っていた事情に関する部分と本人が過失によって知らなかった事情に関する部分とに分けて整理するとともに,同項の@特定の法律行為を委託したこと,A代理人が本人の指図に従って行為をしたことという要件を拡張する方向で改め,本人がその事情を代理人に告げることが相当であったことを新たな要件とするものである。同項の現在の要件については,狭きに失するとの批判があり,本人が代理人の行動をコントロールする可能性があることを要件とすべきであるとの指摘がされている。判例にも,上記@の特定の法律行為の委託があれば,上記Aの本人の指図があったことは要件としないとするものがある(大判明治41年6月10日民録14輯665頁)。本文(3)(4)は,以上を踏まえ,同項の要件を拡張するものである。

赫メモ

 民法101条2項につき、判例(大判明治41年6月10日)は、特定の法律行為の委託があれば本人の指図があったことは要件としない旨を判示しており、要綱仮案は、この判例法理を明文化するものである。中間試案の要件には批判が強かったことから、現行法の「特定の法律行為をすることを委託したこと」という要件が維持された(部会資料66A、14頁)。

現行法

(代理行為の瑕疵)
第101条
2 特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり

 (A=本人,B=代理人,C=相手方,D=第三者)
A 【民法101条2項を適用するには,特定の法律行為を委託されたという要件に加えて,本人の指示を受けたという事実までは不要である】大審院明治41年6月10日判決・民録14輯665頁
   A代理人BとC代理人C´との間で債権譲渡契約が締結されたところ,AC間ではこの譲渡は架空ものであることが合意されていた。
   民法101条2項を適用するには,特定の法律行為をなすことを委託された代理人が本人の指図に従ってその行為をしたことを要することは当然であるが,特定の法律行為を委託された以外に常に必ずしも本人の指図を受けるという特種の事実あることを要するものではない。
   代理人が特定の法律行為を委託され,ACの指図に従って債権譲渡契約を締結したことを認定し,民法101条2項を適用した原審の判断は相当である。