債権法改正 要綱仮案 情報整理

第7 消滅時効

2 定期金債権等の消滅時効

(1) 定期金債権の消滅時効
  民法第168条第1項前段の規律を次のように改めるものとする。
  定期金の債権は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、時効によって消滅する。
 ア 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき。
 イ アの各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき。
(2) 民法第168条第1項後段を削除するものとする。
(3) 民法第169条を削除するものとする。

中間試案

3 定期金債権の消滅時効(民法第168条第1項関係)
 (1) 民法第168条第1項前段の規律を改め,定期金の債権についての消滅時効は,次の場合に完成するものとする。
  ア 第1回の弁済期から[10年間]行使しないとき
  イ 最後に弁済があった時において未払となっている給付がある場合には,最後の弁済の時から[10年間]行使しないとき
  ウ 最後に弁済があった時において未払となっている給付がない場合には,次の弁済期から[10年間]行使しないとき
 (2) 民法第168条第1項後段を削除するものとする。

(概要)

 本文(1)アは,現在の民法第168条第1項前段の規律のうち,その時効期間を[10年間]に改めるものである。定期金債権の時効期間は,債権の原則的な時効期間よりも長期であることが適当と考えられるが,その具体的な期間の設定については,前記2でどのような案が採用されるかによって考え方が異なり得る。本文(1)イ及びウは,定期金債権の弁済が1回もされない場合のみを定めている民法第168条第1項前段には,1回でも支払がされた場合の処理が不明確であるという問題があることから,この点についての規律を付け加えるものである。最後に弁済があった時において未払の支分権がある場合(本文(1)イ)には,債権者はその時から権利行使をすることができるのに対して,その時において未払の支分権がない場合(本文(1)ウ)には,債権者は次の弁済期から権利行使をすることができることから,これに応じて規律を書き分けている。
 本文(2)は,「最後の弁済期から十年間行使しないときも」定期金債権が消滅することを定めている民法第168条第1項後段について,独自の存在意義が認められないことから,これを削除するものである。

赫メモ

 民法168条1項前段の意義について、1度でも弁済がされた後に弁済がされなくなった場合の取扱いが不明確であり、最後の弁済がされた時から起算するのか、あるいは、未払となっている支分権の弁済期のうち最も古いものから起算するのか、解釈に疑義が生じている。
 定期金債権の時効期間については、定期金債権が通常の債権と異なり、支分権を発生させつつ長期間にわたり存続するという性質を持つことに鑑みれば、原則的な時効期間よりも長期の期間とすることが適当と考えられる。民法168条1項前段の時効期間を考慮すれば、主観的起算点、客観的起算点からのそれぞれの時効期間は、原則的時効期間の2倍とするのが適当と考えられる(詳細は、部会資料69A、5頁、部会資料80-3、1頁参照)。
 要綱仮案(1)の規律は以上を踏まえたものである。
 要綱仮案(2)は、中間試算(2)と同じである(中間試案概要の該当部分参照)。
 要綱仮案(3)は、新たに主観的起算点から5年間の消滅時効を設けた場合に、民法169条の存在意義が乏しくなること、他方で債権者が権利行使の可能性を認識していない場合に時効期間を5年間に短縮するまでの必要はないものと考えられることから、これを削除するものである(部会資料69A、8頁)。

現行法

(定期金債権の消滅時効)
第168条 定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。
2 定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。

(定期給付債権の短期消滅時効)
第169条 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。

斉藤芳朗弁護士判例早分かり