債権法改正 要綱仮案 情報整理

第9 法定利率

1 変動制による法定利率(民法第404条関係)

 民法第404条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、当該利息が生じた最初の時点における法定利率による。
(2) 法定利率は、年3パーセントとする。
(3) (2)にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年ごとに、3年を一期として(4)の規定により変更される。
(4) 各期の法定利率は、この(4)の規定により法定利率に変更があった期のうち直近のもの(当該変更がない場合にあっては、改正法の施行時の期。以下この(4)において「直近変更期」という。)の基準割合と当期の基準割合との差に相当する割合(当該割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変更期の法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
(5) (4)の基準割合とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の[6年前の年の5月から前年の4月まで]の各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(当該割合に0.1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示する割合をいう。

(注)この改正に伴い、商法第514条を削除するものとする。

中間試案

4 法定利率(民法第404条関係)
 (1) 変動制による法定利率
   民法第404条が定める法定利率を次のように改めるものとする。
  ア 法改正時の法定利率は年[3パーセント]とするものとする。
  イ 上記アの利率は,下記ウで細目を定めるところに従い,年1回に限り,基準貸付利率(日本銀行法第33条第1項第2号の貸付に係る基準となるべき貸付利率をいう。以下同じ。)の変動に応じて[0.5パーセント]の刻みで,改定されるものとする。
  ウ 上記アの利率の改定方法の細目は,例えば,次のとおりとするものとする。
   (ア) 改定の有無が定まる日(基準日)は,1年のうち一定の日に固定して定めるものとする。
   (イ) 法定利率の改定は,基準日における基準貸付利率について,従前の法定利率が定まった日(旧基準日)の基準貸付利率と比べて[0.5パーセント]以上の差が生じている場合に,行われるものとする。
   (ウ) 改定後の新たな法定利率は,基準日における基準貸付利率に所要の調整値を加えた後,これに[0.5パーセント]刻みの数値とするための所要の修正を行うことによって定めるものとする。
(注1)上記イの規律を設けない(固定制を維持する)という考え方がある。
(注2)民法の法定利率につき変動制を導入する場合における商事法定利率(商法第514条)の在り方について,その廃止も含めた見直しの検討をする必要がある。

 (2) 法定利率の適用の基準時等
  ア 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利率は,利息を支払う義務が生じた最初の時点の法定利率によるものとする。
  イ 金銭の給付を内容とする債務の不履行については,その損害賠償の額は,当該債務につき債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率によるものとする。
  ウ 債権の存続中に法定利率の改定があった場合に,改定があった時以降の当該債権に適用される利率は,改定後の法定利率とするものとする。

(概要)

(1) 変動制による法定利率
  本文アは,低金利の状況が長期間にわたって続いている現下の経済情勢を踏まえ,年5パーセントという法定利率が高すぎるとの指摘がされていることから,当面これを引き下げることとするものである。ここでは,具体的な数値の一つの案として,年3パーセントという数値をブラケットで囲んで提示している。
  本文イは,法定利率につき,利率の変動制を採用するものである。法定利率については,一般的な経済情勢の変動等に連動して適切な水準を確保するために,基準貸付利率(日本銀行法第15条第1項第2号,第33条第1項第2号)を指標とする変動制を採用するものとした上で,その具体的な改定の仕組みにつき,緩やかに変動を生じさせる観点から,年1回に限り,かつ,例えば0.5パーセント刻みで改定されるものとしている。これに対して,法定利率の変更は法律改正によるのが相当であるとして,法定利率につき固定制を維持すべきであるとの考え方があり,これを(注1)で取り上げている。
  本文ウは,法定利率の改定の仕組みに関する細目として定めるべき内容を例示するものである。具体的な検討事項として,@改定の有無が定まる基準日の在り方(本文ウ(ア)),A法定利率の改定を直前に法定利率が定まった日の基準貸付利率と比べて乖離幅が一定の数値以上であったときに限ることの要否(同(イ)。その乖離幅として,差し当たり0.5パーセントをブラケットで囲んで提示している。),B基準貸付利率に所定の数値を加えた上,それが小数点以下の数値を0.5刻みとするための所要の修正の在り方(同(ウ))を挙げている。
  (注2)では,商事法定利率(商法第514条)の見直しを取り上げている。現在年6パーセントの固定制とされている商事法定利率については,民法の法定利率を変動制へと改めるのに伴い,@廃止する,A変動制による同法の法定利率に年1パーセントを加えたものとするなどの見直しの要否を検討する必要があると考えられる。

(2) 法定利率の適用の基準時等
  本文アは,民法第404条を改め,利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利率は,利息を支払う義務(支分権たる具体的な利息債権)が生じた最初の時点の法定利率によるものとしている。
  本文イは,民法第419条第1項本文を改め,金銭の給付を目的とする債務の不履行については,その損害賠償の額は,当該債務につき債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率によることとしている。なお,同項ただし書は維持することを前提としている。
  本文ウは,法定利率が適用される債権が存続している間に法定利率の改定があった場合に,当該債権に適用される利率も改定するものとしている。

赫メモ

 要綱仮案(1)は、法定利率につき変動制を採用することにともない、利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないとき、どの時点の法定利率が適用されるのかを明らかにしている。
 要綱仮案(2)以下は、法定利率を一旦3%と定めたうえで、その後、3年ごとに、市場金利の参照し、その間の金利変動分を加減して新たな法定利率を算出する方法による変動制を採用するものである。法定利率に反映させるべき、市場金利の変動分は、各時点の前60か月間の市場金利(短期貸付け平均利率)の平均値(基準割合。0.1%未満は切捨て)を算出し、両平均値の差(1%未満は切捨て)をもって、算出する(詳細は部会資料81B参照。商事法定利率の廃止については、部会資料82-2、2頁参照)。
 要綱仮案は、中間試案(2)ウとは異なり、法定利率が適用される債権が存続している間に法定利率の改定があった場合でも、適用される法定利率は変わらないことを前提としている(部会資料74B、7頁)。

現行法

(法定利率)
第404条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。

関連部会資料等

斉藤芳朗弁護士判例早分かり