債権法改正 要綱仮案 情報整理

第9 法定利率

3 中間利息控除

 中間利息控除について、次のような規律を設けるものとする。
 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、損害賠償の請求権が生じた時の法定利率によってこれをしなければならない。

中間試案

4 法定利率(民法第404条関係)
 (3) 中間利息控除
   損害賠償額の算定に当たって中間利息控除を行う場合には,それに用いる割合は,年[5パーセント]とするものとする。

(注)このような規定を設けないという考え方がある。また,中間利息控除の割合についても前記(1)の変動制の法定利率を適用する旨の規定を設けるという考え方がある。

(概要)

 損害賠償の額を算定するに当たって中間利息控除をするか否かは解釈に委ねることを前提に,現行の法定利率に代えて中間利息控除をする場合に用いるべき割合(固定割合)を定めるものである。判例(最判平成17年6月14日民集59巻5号983頁)は,損害賠償額の算定に当たっての中間利息控除には,法定利率を用いなければならないとするが,前記(1)のとおり法定利率を変動制に改める場合には,法定利率をそのまま中間利息控除に利用する根拠が希薄になるほか,実際上,どの時点の法定利率を参照すべきであるか等の疑義が生じ得る。そこで,本文では,現在参照されている固定制の法定利率をそのまま維持する規定を設けることとし,その具体的な数値として現行の年5パーセントをブラケットで囲んで示している。
 これに対しては,規定を設けるべきでないという考え方がある。これは,変動制であっても引き続き法定利率を参照すればよいという理解を含め,解釈論に委ねるという立場である。また,前記(1)の変動制の法定利率(具体的には,不法行為の時などの基準時の法定利率)を適用する旨の明文規定を設けるべきであるという考え方がある。これらの考え方を(注)で取り上げている。

赫メモ

 中間試案に対しては、中間利息控除の割合のみ高いまま固定することは被害者救済の観点から著しく不合理である等の反対意見が多く寄せられたことから、要綱仮案では、中間利息控除をする場合に法定利率を用いることを法定し、利率の基準時は損害賠償請求権の発生時点とされた(部会資料74B、10頁)。

現行法


斉藤芳朗弁護士判例早分かり

【中間利息控除の場合の割引率】 最高裁平成17年6月14日判決・民集59巻5号983頁
 9歳の子どもの交通事故による死亡の賠償請求事件。原審は,年3%のライプニッツ係数で逸失利益を算出した。(67歳までの58年間の係数は,年3%のライプだと27.33,年5%のライプだと18.82となり,8年6ヶ月程度の差となる。)
 民法404条で年5%の民事法定利率が定められたのは,民法の制定に当たって参考とされたヨーロッパ諸国の一般的な貸付金利,法定利率,我が国の貸付金利を踏まえ,金銭は通常の利用方法によれば年5%の利息を生ずべきものと考えられたからである。現行法は,将来の請求権を現在価額に換算するに際し,法的安定性,統一的処理が必要とされる場合には,法定利率により中間利息を控除することとしている(民事執行法88条2項,破産法99条1項2号)。損害賠償額の算定にあたり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するについても,法的安定性,統一的処理が必要とされるのであるから,民法は,民事法定利率により中間利息を控除することを予定している。このように考えることによって,事案ごとに,裁判官ごとに,中間利息の控除割合についての判断が分かれることを防ぎ,被害者相互間の公平の確保,損害額の予測可能性による紛争の予防も図ることができる。