ご質問:マウスピース矯正の問題点


お答え  

1)まず、歯の大きさと力関係から。

 体の大きなお相撲さんと子どもが綱引きをすると、どちらが勝つと思いますか?

 子どもが負けますね。お相撲さんが奥歯、子どもが前歯と置き換えた場合も同じです。綱引きでなく、押し合いをした場合でも同じ結果です。体の小さいほうが負けます。

 この原理を利用して、歯科矯正治療は行われます。 専門用語で差動矯正力(Differntial Force)と言います。歯科矯正学の教科書には必ず記載されていることなのです。

 マウスピース矯正だけ、子どもがお相撲さんに勝つなんてことは起きません。(そんな都合の良い話はありません!)

2)実際の例(前歯部叢生症例) 

叢生症例

(写真1)

治療前の状態

非抜歯

(写真2)

フォトショップで前歯だけきれいに並ぶように動かしてみました。

非抜歯 写真1と写真2を重ね合わせたもの。非抜歯で治療した場合。奥歯は動かないで、前歯が前に押し出された状態で並ぶしかありません。

 簡単に言うと、マウスピース矯正では、一番前に出た歯の位置に前歯がそろいます。 マウスピース矯正っT、写真2の状態をコンピュータを使って並べて、3Dプリンターで作るだけの話です。

 よって、出っ歯ちゃん(上顎前突)の場合、上顎前突は絶対に(!)治りません。(治るわけがない。) 顎の横幅を広げて並べようとする歯科医もおりますが、歯並びの幅は内側から舌、外側から頬と唇の力関係で決まってます。無理に広げても必ず元に戻ります。 通常の歯科矯正治療では、歯並びの幅を変えないのが基本です。(後戻りの調査研究で、実証済み)

 マウスピース矯正の利点は、ブラケットを付けないという点だけです。治るか治らないかという話なら、「治らない可能性(危険性)の高い」治療です。

 その点を十分理解してください。

※歯のならぶ位置がどのようにして決まっているのか?については、こちら→確認する

2)上下の骨(顎骨)の位置のズレは考慮されていない。

 歯ならびだけはキレイに並んでも、上下の顎の位置や大きさにズレがある場合は、噛めない状態になります。直径20cmのフライパンで作ったホットケーキを10cmのお皿に盛り付けたら、ホットケーキがはみ出しますよね。専門用語で上下歯列のコーディネイト(調和させる)は、マウスピース矯正では無理です。

3)歯の正確な移動ができない。

 歯を動かすときに歯の重心は歯根3分の1にあるとされております。ブラケットを付けた歯科矯正治療では歯の重心から動かすように装置になっております。=歯体移動が可能。(ブラケットはアングル先生の試行錯誤の結果発明された装置です。)

 

これに対して、マウスピース矯正では、歯の頭(歯冠 )に力が加わるのみですから、歯の重心を中心として回転運動(傾斜移動)しか起きません。

(参照→歯科矯正治療では、なぜブラケットをつけるのですか?

 歯体移動で治療した歯は後戻りしにくいのですが、傾斜移動で治療した歯は後戻りしやすいのです。

 なお、傾斜移動の方が早く動きますので、治療期間は短くなりますが、後戻りしやすいわけです。

 逆に歯体移動の場合、歯の移動はゆっくりとなりじかんがかかりますが、後戻りしにくい治療となるわけです。

※ちなみに日本矯正歯科学会では、インビザラインの宣伝をしないように勧告してます。(学会には出禁です。)歯科矯正の専門家集団が否定している治療法が野放しになっているはなぜなんでしょうね?

#世の中には、歯科矯正治療=歯を並べること、と考えている歯科医師や患者さんがおりますが、治療後の安定性が問題なのです。マウスピースでキレイには並びますよ(並ぶだけ)。でも使わなくなったらすぐに戻ります。上下の顎骨の位置にずれがあれば、ちゃんと噛めません。

 


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