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原爆の恐れ、全員退去の指令 | ||
8月11日午前零時半頃、町内の役員が「緊急命令だ。全員立ち退き!」と、怒鳴り歩いた。 何がなんだかよくわからないが、隣近所でガタガタと音を立てて出ていく様子なので、これはただごとではないと、荷物も持たずに母と妹を伴って出た。 |
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真っ暗な町の中をぞろぞろと人の行列が続いた。アメリカの艦隊が沖にいて艦砲射撃があるかもしれないなどと話しているものもあった。 ところが万代橋にきてもそれらしい様子がない。そのうちデマだという人も現れるので一旦家へ帰った。 |
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夜が明けてまもなくまた全員退避せよとの触れが出た。今度は県知事命令で本当だった。原爆の次のねらいは新潟だという情報が入ったらしい。(その時はまだ広島に落とされたのが原子爆弾とはわからなかったが) 市内は大騒ぎでリヤカーや大八車に家財道具を積んで田舎を目指す人の群が延々と続いた。母と妹は汽車で新津市七日町の親戚に避難し、自分と祖父は運べるだけの荷物をリヤカーに積んで七日町へ向かった。 真夏の太陽が照りつける中、アリの行列のように亀田街道を進む姿はまさに避難民そのもので、これはもう駄目だなと思った。 |
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