三線 七尺節(しちしゃくぶし)

さて、「綛掛の踊り」という舞踊の後半、というかメインの踊りのバックに流れるのがこの「七尺節」です。「干瀬節」と「七尺節」のコンビはまるで、オペラのレシタティーヴォとアリアのような組み合わせだなぁ、といつもわたしは思います。

わくのいとかせに くりかへしかへし
かけて面影の まさてたちゅさ
かせかけてとぎや ならぬものさらめ
くりかへしかへし 思どましゅる
(わくぬいとぅかしに くゐかゐしがゐし)
(かきてぃうむかぢぬ まさてぃたちゅさ)
(かしかきてぃとぅぢや ならんむぬさらみ)
(くゐかゐしがゐし うみどぅましゅる)
意味:
こうして枠の糸を巻いていると
愛しいあの人の面影がありありと見えるようだ
かせかけても思いがとどまるものではない
くりかえしくりかえし、思いはつのるばかりである

オペラのアリアではないのですが、「七尺節」というといつも連想する歌があります。それはシューベルトの「糸を紡ぐグレートヒェン」というドイツリート。

心の安らいは消え失せ わたしの心は重い。
わたしの心の安らいは、もはや何処にも 何処にもない。

あの方のいないところは わたしには墓の中と同じこと。
この世のことはすべてみな わたしには味気ない……
(以下省略)

「七尺節」の「かせ」に糸を巻くゆったりとしたリズムに比べると、くるくる回る糸車のリズムはもう少しせわしないし、シューベルトの歌のほうはもっともっと「暗くて重い」のですが、どちらも「糸を巻く」という、はてしない単純作業。で、どちらの場合も恋する女としては、ついつい心に想う男のことを考えてしまうという点では、古今東西を問わず同じのようです。

[参考]
「わかりやすい歌三線の世界」勝連繁雄著 ゆい出版
「おきなわの歌と踊り」川平朝申著 月刊沖縄社


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