ラッシュアワー (製作年度: 1998年)
レビュー日:2009.10.8
更新日:2009.11.2
評価:★★★★★
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解説(Yahoo映画より):
ロサンジェルス在駐の中国領事ハンの娘スー・ヤンが誘拐されるという事件が発生。ハンは香港からエリート刑事リーを呼び出すが、捜査を進めるFBIにとって彼は邪魔な存在だった。そこで、彼におもり役を付けて捜査から遠ざけようとする。その役を押しつけられたのがロス市警のお騒がせ刑事カーター。最初は反目し合っていたリーとカーターだったが次第に二人は結束し、やがて意外な黒幕を突き止めるのだった……。
クールでオシャレなジャッキーもイイ
オープニング、香港の夜景から港へと視点が移っていき、やがてそこを舞台に始まる警察の摘発劇……
このあたりの映像がとてもきれいでオシャレな感じ。続いて登場するリー捜査官(ジャッキー・チェン)も、ドキッとするほどカッコイイ。いや今まで情けない雰囲気のほうがカワイくていいなんて言ってたけど、ごめんなさい、ちょっと評価改めます。シリアスにかっこいいジャッキーも素敵だ(笑)。もっともはじめのほうこそクールに決めてるんだけど、途中からだんだんいつもの3枚目方向にイメージ壊れていくところがやっぱりジャッキー(爆)。
次に登場するロス市警カーター(クリス・タッカー)の犯人逮捕シーンは香港とは対照的で拳銃がんがん撃ちまくる荒っぽさ。この後ふたりが出会ってFBIもからんでくるあたりから、「荒っぽい銃社会アメリカ」と「洗練されたマーシャルアーツの本場中国」の対比が鮮明になっていきます。中国領事館に乗り込んだリーを侵入者と勘違いしたFBIと一戦まじえるあたりでは、リーがFBIの猛者をあっという間に武装解除してしまう手際が鮮やか。
このリー捜査官、最初英語がしゃべれないとカーターに思わせて相手の本音を引き出してしまう「食えないオッチャン」っぷりも面白いし、ガサツなアメリカ文化を内心小馬鹿にしているようなところもありながら、実はアメリカンミュージック大好きで、音楽が聞こえてくるとつい我を忘れてノッてしまう、というお茶目な性格。
それが騒々しくて強引で自分勝手なカーターとどう意気投合していくか、というプロセスがこの映画の醍醐味でもあります。
誘拐される中国領事の娘スーヤンの抵抗ぶりはアッパレ。
目の前で運転手と護衛が撃ち殺された瞬間、彼女は大声で悲鳴を上げ、車の中から引きずり出そうとする犯人に大暴れして抵抗します。それは日本の警察も教えている「子供の誘拐防止対策」のセオリー通り。
普通の子どもだったらあそこで大声は出せない。気絶しないまでもすくみあがって声も出なくなるところです。ちゃんと大声出す訓練をしていなければ(ちょっと身に覚えがある……嫌なことだけど)。
あれ見るだけで、リーが万一に備えてしっかり護身術教え込んだんだなぁというのがわかります。手近なカバンとかアクセサリまで武器にして反撃するところなんぞ師匠譲りだ(爆)。相手が用意周到に計画立ててたプロだからあえなく拉致されてしまうけど、素人の誘拐犯相手なら、あれだけ頑張れればたぶん逃げられると思うぞ〜。
(昨今の情勢考えると、子どもにこの映画見せてあれくらいの心得は教え込んでおいたほうがいいのかも)
待てよ、誘拐される前、車の中でスーヤンがアメリカンミュージックをノリノリで歌うシーンがあったけど、あれは師匠の影響? (爆)
それから、これから「シャンハイ・ヌーン」を見る人は、チャイニーズ劇場広場のシーンを覚えといてください。ニヤリとできます(笑)。
【ここが美味しい名シーン】
いやこの作品、美味しいシーンはいっぱいあるのでどれを紹介すればいいか悩むところですが……
水と油状態だったふたりの距離が、張り込みの途中にだんだんと縮まっていくあたりでしょうか。直接のきっかけはたまたま流れてきた「ウォー」という歌。この歌をノリノリでうたいだしたリーを見てカーターが歌詞の正しい発音や踊り方を教え、そのお返しにリーが相手の拳銃を奪う格闘テクニックを教え(これがちゃんと後で活用される)……
さらにお互いの父親もまた警察官だったと知ったふたりが、まるで子どもが「うちの父ちゃんこんなにエライんだぞ」というように自分の父親の功績を自慢しあうあたりが笑える。
(もっともこのシーンはわけあって後々ちょっと切ないシーンになるんだけど)
【いよっ、名演技!】
この作品で光るのはハン領事役のツィ・マーとリー役のジャッキーふたりの名演技。
ツィ・マーは領事にふさわしい品格を備えながらも娘を愛する良き父親ぶりを見せ、なおかつリーをはじめとする周囲の人々に「この人を守ってあげなきゃ」と思わせてしまうオーラを漂わせています。こういう人を「君子」というのかも。
で、このふたりの名演技がとくに際立つのは、最初の人質救出作戦が失敗に終わった後の中国領事館の場面。
知らなかったこととはいえ、別の手がかりを追って犯人のアジトにたどりつき、身代金の受け渡しを妨害してしまったリーがハン領事に謝罪するところからこのシーンが始まります。ここでのジャッキー、演劇学校で「悄然」をお題に演技しろ、と言われたら模範演技になりそうなほど、表情から姿勢からその二文字がにじみ出てくるようなたたずまい。
そんなリーをハン領事は責めるでもなく、内心の落胆を押し隠すようにたんたんと、こうなったらFBIに頼るしかない、と告げる、ちょうどそこに入ってくる犯人からの電話。
犯人は身代金の値上げを通告し、一瞬娘の声を聞かせて無情に電話を切ります。
その瞬間取り乱すハン領事を目の前に苦悩の色を深くするリー……
この後FBIに護送されるように帰国のため空港に向かうリーの表情も、なんともいえずいい感じです。
(その後カーターが離陸寸前の飛行機から強引にリーを連れ戻し、起死回生の黒幕追求劇へとつながっていくわけですが)
