シャンハイ・ヌーン [DVD] シャンハイ・ヌーン (製作年度: 2000年)
レビュー日:2009.8.22
更新日:2009.11.1
評価:★★★★★
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解説(Yahoo映画より):
1881年、中国・紫禁城からペペ姫が誘拐された。犯人は身代金として金貨10万枚、人質との交換場所をアメリカ・ネヴァダ州カーソン・シティと要求してきた。だが身代金を運ぶためアメリカへ渡った一行は、列車強盗に遭遇。カバン持ちチョン・ウェンは仲間とはぐれるが、荒野の果てで出会ったのは仲間から見放され砂漠に埋められていた列車強盗団のボス、ロイ・オバノンだった。やがて意気投合した二人は、協力してペペ姫を救出しようとする。


運命の出会い(笑)

そもそもの発端は「ナイトミュージアム」なんですよね。(2のほうではない)
この映画のレビューをいろいろ読んでると時たま言及されてるのが「シャンハイ・ヌーン」という映画。なんでも「ナイトミュージアム」でミニチュアカウボーイやってたオーウェン・ウィルソンがジャッキー・チェンと共演してる西部劇映画だとか。
なんだそれ……???
というわけでTSUTAYAで借りてきて見たら、結構面白かったんですよ、これが。

清朝の近衛兵ジャッキーがさらわれたお姫様を追ってアメリカに渡り、そこで列車強盗やってたオーウェン・ウィルソンと出会って……という荒唐無稽な話なんだけど、ああそうか、「ナイトミュージアム」の西部開拓ジオラマ風景はこの映画へのオマージュだったのね、と納得。(工事現場で働く中国人労働者の姿もあったし)

それはともかく、実はジャッキー・チェンの映画って、ちゃんと見たのはこれが初めて(カンフー映画とか興味なかったので)。ところが、この映画の中で、長〜い三つ編みをぶんぶん振り回して立ち回りを演じるジャッキーの姿に……惚れました。(おいおい)
以後、ジャッキー・チェン出演映画をかたっぱしから借りまくることに。
そう、この映画に出会わなかったらたぶんこのDVDレビュー集も生まれなかったはずです。

でもこれ、かなりナナメなはまり方なんだろうなぁ。だって、「カッコよく敵をバッタバッタとなぎ倒していくジャッキー」ではなく、「防戦一方で時には悲鳴上げて逃げ回りながらも、要所要所で敵を倒しちゃってるジャッキー」のほうに魅力を感じるんだから(笑)。
特に手近にあるものなんでも使って武器にしちゃう「生活の知恵的格闘術」や、カッコイイというよりどちらかというとお人よしで情けない雰囲気を漂わせているジャッキーが、いよいよとなってキッとまなじりを決する表情がいいなぁ。萌えます(笑)。

三つ編みのオジサンがカワイイと思える日が来るとは思わなかった(爆)。でも本当にカワイイんです。途中で悪の親玉ロー・ファンにその三つ編み(当時の中国人にとっては命より大事な弁髪)をちょん切られてしまう場面があるのですが、マジでロー・ファンに殺意覚えたもの。

というわけで目下一番のお気に入りシーンは、蹄鉄結びつけたロープ一本を武器にガンマンどもと渡り合う三つ編みジャッキー。

何度も見直すと気づくのが、ジャッキーがかなり細かい演技をしていること。最初はぎこちなかった英語がだんだんうまくなっていくところとか(でも最後まで舌っ足らずな感じは抜けないのね)、牢屋にぶち込まれてロイと向かい合って、めちゃくちゃ恐い顔してたのが、だんだん表情が和らいでいくところとか(ここで背筋をピンと伸ばしてすわった姿がさすが武人、という感じ)。ハデなアクションに目を奪われがちだけど、ジャッキーって表現力の豊かな人だから、実はイイ演技もしてるのです。


【I LOVE 姜文】

「姜文」というのは、「シャンハイ・ヌーン」でジャッキー・チェンが演じている清朝近衛兵チョン・ウェンの中国語表記。実在の中国の俳優さんの名前らしいですが、北京語発音だとジィァン・ウェンとなって欧米人の耳には「ジョン・ウェイン」と聞こえるのがちょっとしたミソ。

これが何度もDVD見直すうちに、だんだん味のあるキャラだなぁと思えてきます。真面目でお人よしで、知恵もあるけどちょっとドジで、だけど誇り高い中国人としてのプライドも持ってる好漢……でもなぜか「情けないオーラ」も漂ってる。
総合すると「すっごくカワイイ」(爆)。
ジャッキー・チェンがさまざまな映画の中で演じてきた役柄の中で、初恋キャラであり今のところ最愛キャラでもあります。

カンフーだってめちゃくちゃ強い、という設定にはなってません。近衛兵としてもかなり下っ端の落ちこぼれで、さらわれた姫救出の精鋭にも選ばれず、一行の通詞役の甥、というコネを使ってかろうじてもぐり込んだという役どころだから、確かにカンフーを知らない列車強盗や先住民や西部の荒くれ男達相手なら強いけど、悪役のボス相手の戦いではかなり押され気味。ほとんど負けかかって絶体絶命まで追い詰められ、捨て身の攻撃で相手を倒し、相打ちになりかかったところを姫のとっさの行動で救われる。
(それ考えると、ラスト近くで姫の意に反して中国へ連れ帰ろうとする他の近衛兵と戦う羽目になった時、けっこう互角に戦ってるのが不思議なんだけど、そこはまぁ実戦経験積んで強くなったということで(笑))

これは続編の「シャンハイ・ナイト」でも同様で、悪役二人相手に健闘するもののさんざん痛めつけられ、ひとり目は妹の助力でなんとかやっつけ、二人目はやはり相打ち覚悟の捨て身の攻撃をかけ、自分も転落しかかるところをかろうじて相棒ロイに手を差し伸べられて助かる、という描かれ方。

昔からのジャッキーファンからすると弱すぎて不満かもしれないけど、このハラハラさせる部分も魅力だったりします。

男の子的にはアクションにスピードとか迫力とかキレを求めるのかもしれないけど、わたしからすると動きのバラエティとか、緩急のリズムのつけ方とか、要所要所で決まるポーズの美しさのほうが見てて快い。蹄鉄を結びつけたロープでの戦いは舞を見ているようだったし、最後の教会のシーンで、近衛兵のリーダーといざ勝負という時に、片足立ちになってもう一方の脚を立てた槍にからめ、両手を空けて乱髪をバンダナできゅっと結ぶポーズもなんだかすごくかっこよかった(笑)。


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