ラッシュアワー2 [DVD] ラッシュアワー2 (製作年度: 2001年)
レビュー日:2009.10.13
更新日:2009.11.1
評価:★★★★
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解説(Yahoo映画より):
クリス・タッカーとジャッキー・チェン主演のアクション・コメディの続編。今回は「グリーン・デスティニー」のチャン・ツィイーが悪役で出演している点も注目。のんきにバケーションを楽しもうと香港に乗り込んだリーとカーター。そんな矢先、アメリカ大使館で爆破事件が起きる。香港マフィアの仕業と睨んだ香港警察はリー警部に極秘捜査を命じる。結果、一緒にいたカーターも事件に首をつっこむハメになり、楽しみにしていたバカンスは泡と消えてしまい……。


あのクールだったリーが……

いやもう涙出るほど笑わせていただきました……が。
一作目でシリアスにカッコよかったリー警部のキャラが壊れまくり(涙)。
のっけから香港の街中を運転しながらカーターとふたりで大合唱、という弾けっぷりには正直ちょっとひいた(知り合いにこんな人いたら間違いなくドン引きする)。その後もいろいろ出るわ出るわ……
いや確かに一作目でも途中でちょっと壊れてきてたけど(だからなんか嫌な予感したんだけど)、なにもそこまで……しかも隠してた本性出ちゃいました(爆)、という壊れっぷりなので、もう笑うしかない。たぶん一作目はアウェイのアメリカだったから緊張してカッコつけてたんでしょうね。ホームの香港じゃあのくらいが普通なのかも。運転しながらノリノリで歌ってる姿が目に浮かぶ。時々信号待ちで隣に並んだ車の人に「なんだコイツ」という目で見られてたりして(笑)。マッサージ店で担当の女の子を嬉々として選んでるカーターの後ろで、ずっとニヤニヤしながら見守ってる姿もツボです。

でもまぁ、リー警部には「時々壊れなきゃやってられない」というほど辛い事情があって、それは話が進むにつれ明らかになってくるのですが。
だから、壊れちゃうのは仕方ないけど、もう少しクールな部分も残しといてほしかったよぉ……一作目冒頭のハードボイルドなリーの面影はいったいどこに(泣笑)

でも「2」ではじめて明らかになるリーの父親の死にまつわる事情はシビアだったなぁ……リーがカーターにそれを打ち明ける時、一瞬声を詰まらせるあたりが……泣けます。
おまけにその瞬間はリーの背後から撮ってるからいっさい表情はうつらないんだけど、後姿と声の調子だけで「あ、そこで泣きそうになったな」とわかる。

それを聞いたカーター、そこから俄然事件解決に向けてリーを引っぱってく勢いで頑張るんだよね。わがままで自分勝手だけど、根は結構イイヤツなんだやっぱり(笑)。

「ラッシュアワー」一作目でリーとカーターの距離を大きく縮めたのは、どちらも父親が警官だったという共通点。それを知ったふたりがお互いムキになって自分の父親を自慢し合うシーンは笑いどころだったけど、実はどちらの父親も非業の死をとげていたのでした。
(それがわかってみると、一作目でのふたりのガキンチョみたいな「親父自慢」シーンもなんだか切ない)

一作目で香港に送り返されそうになったリーを連れ戻しに来たとき、カーターは自分の父親が相棒に見殺しにされたことを告白しました。カーターの場合、それがトラウマとなって同僚との協調性のなさとか単独で突っ走る問題行動となっているらしい。

リーのほうは東洋人的自制心からか、もう少し社会に適応してはいるけれど、香港警察で今のキャリアに到達するまでには、同僚を殺されたりあるいは同僚に裏切られたり、いろいろ辛い目にあってるんじゃないかというのは容易に推測できる。
(一作目にそれを暗示するようなセリフもあったし)
カーターが爆破テロに巻き込まれて死んだと思い込んだリーが、涙目で音楽を聴いているうちにだんだん楽しそうな顔になってくる……という「おいおいっ」と突っ込みたくなるシーン(笑)があるんだけど、ここを見たとき、ああそうか、好きな音楽に何もかも忘れて没頭することで、彼なりに精神のバランスを取って生きてきたんだろうなぁと思えてきました。

一作目の時にどこまでこういう裏事情が設定されてたか不明だけど、こういう性格設定でキャラに厚みが出ることは確か。そこらへんはハリウッドの凄いところだなと思う。
やっぱり、なんだかんだ言ってもハリウッドには、素材を美味しく料理して観客に提供するノウハウの蓄積があるし、生存競争の激しい中で磨き上げてきたテクニックがあるんだよなと実感する。音楽の使い方とかも絶妙だしさ。

「ラッシュアワー」シリーズを見たら、アメリカンポップスを聴きたくなった。マイケル・ジャクソンってやっぱり偉大だったよな〜。カーターが香港のナイトクラブで歌う「今夜はドント・ストップ」、名曲だわ、やっぱり。


【ここが美味しい名シーン】

このシリーズにおいては「空港シーン」というのがひとつのヤマ場になるようで、一作目と同様二作目にも途中で空港シーンが出てきます。
どちらもリー&カーターコンビの行き詰った捜査に突破口が開ける転換点であり、そのきっかけを作るのがそこまでどう見ても捜査をひっかきまわしてるだけのカーター、というのが面白い。
で、どっちの空港シーンでもリーはどん底状態(笑)からカーターに救われるわけですが……

「2」では休暇中であるにもかかわらずリーが自分に内緒で捜査をはじめ、おかげでとばっちりくらってひどい目にあったり(自業自得という感じもするけどw)、いきなり介入してきたアメリカ当局のエージェントに邪魔者呼ばわりされたりですっかり気を悪くしたカーター、空港まで送ってきたリーに不満をぶつけまくります。

自分をただのワーカホリックと誤解するだけでなく、香港に対する心証も悪くして帰国してしまいそうなカーターを見て、リーはカーターを追いかけ、溜息をひとつついて、自分がこの捜査にこだわるわけ……父親の死によって迷宮入りした事件の真相を突き止めたいという思いを打ち明けるのです。
やっぱりわたしはここのシーンが好きだなぁ。

でも、一作目では「オレの国の事件に介入するな」という態度ありありのFBIといい、二作目では香港で起きてるのに「うちのヤマに手を出すな」と露骨に香港警察に圧力かけるシークレットサービスといい、アメリカ当局の横暴ぶりときたら……
なんか在沖米軍見てるようでムカつく。(-_-#)


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