ザ・ベスト・オブ 宇宙大作戦 デジタル・リマスター版 [DVD] ザ・ベスト・オブ 宇宙大作戦
レビュー日:2009.7.1
更新日:2009.10.31
評価:★★★★


内容紹介(AMAZONより):
★「スター・トレック」ビギナーに最適なTVシリーズの傑作エピソードを厳選!!

<収録エピソード>
●危険な過去への旅 The City on the Edge of Forever
誤って薬を大量に服用してしまったマッコイは情緒不安定になり、過去の地球へとつながる時の門に飛び込んでしまう。地球の歴史が変わるのを防ぐべく、カークとスポックも後を追い、1930年の地球に飛び込む。
●新種クアドロトリティケール The Trouble with Tribbles
穀物の警備を強要され、イラだっていたカークは、クリンゴン人がトリブルを使って陰謀を企てていることを知る。毛皮の小さな生物、トリブルには食べることと繁殖することしか能がなかった。
●宇宙基地SOS Balance of Terror
チェロンの戦い以降、ロミュラン人が地球人の前に姿を見せることはなかった。しかしエンタープライズがロミュランの戦艦を捕らえた際、あるクルーの疑惑が浮上する。
●バルカン星人の秘密 Amok Time
すべてのバルカン人に7年ごとにやってくるという生殖期を迎えたスポック。直ちにバルカン星へ帰らなければ命の危険もある。カークはスポックのために司令部の命令を無視して彼をバルカン星へと連れて行くが、2人はそこで殺し合いの決闘をすることになってしまう。


懐かしき「宇宙大作戦」の世界

スター・トレック・オリジナル・シリーズの中でも傑作とされる4エピソードを収録したもの。
デジタル・リマスター版ということで、特撮シーンがCGに置き換えられたりはしているらしいけど、今見てみるとかなりセットがチャチ。昔見ていた頃は日本の特撮物よりスゴイと思ってたけど、エンタープライズ内部なんて「ウルトラマン」の科学特捜隊司令室と五十歩百歩だわ(笑)。
でもそんな古臭さが見ているうちにどうでもよくなる面白さ……ある種の舞台装置と割り切っちゃえば(かなり苦しいけど)なんとかなります。それはやっぱり、このシリーズの面白さの核心が、キャラ設定とセリフのやりとりにあるからだ、というのも再確認できました。

それにしても、こうして比べると小説ってすごいな、と思う。映像だといくら未来の情景を描いても、どうしても作った時のデザインセンスや技術レベルの制約を受けるけれど、小説は読み手の自由がきくのでイメージがいくらでもアップデートされる。だから技術の根幹にかかわるところが変わっちゃうとちょっと苦しいけど、小説のイメージはあまり古びない。

お話としての切なさは「危険な過去への旅」がダントツだし、笑いどころの多さは「新種クアドロトリティケール」(わたしの中ではノヴェライズのタイトル「トリブル騒動」のイメージが強い)がピカイチ。でも、死んだと思ったキャプテンが生きていたとわかった時、一瞬見せてしまったスポックの嬉しそうな顔が印象的な「バルカン星人の秘密」も、それ見られただけで充分です、といいたい出来だし、ある意味いちばん地味かもしれない「宇宙基地SOS」も、このあいだの映画にかぶるような場面があって「あっ」と思わされたし。

あと、前から気づいてはいたけど、TVのオリジナルとノヴェライズ版とでは多少内容が違ってたりするので、TVの方にだけある美味しいシーン、というのもあるんですよね、これが。(「バルカン星人の秘密」のあのシーンだって、今回はじめて知った。ちょっと悔しい)

実はわたし、どうもこのあたりのエピソード見てないっぽいんですよね。
当時はビデオなんてありませんから、放映時間に居合わせないと再放送するまで見られない。ノヴェライズ読んで補完してるとはいえ、ずいぶん見てないエピもあるはず。最近NHK-BSで再放送してるらしいけど、うちBS見られないしなぁ。
というわけで、このDVDのラインナップはかなり美味しい詰め合わせでもあったのです。おまけに最近のDVDは字幕や吹き替えが自由に設定できるので、オリジナルを日本語字幕で見たり、吹き替えで見たり(これが昔の視聴環境にいちばん近い)、はては日本語の吹き替えを聞きながら英語字幕でもとのセリフはどうしゃべってるかなんてチェックもできる。技術の進歩ってたいしたものだ。

で、いろいろ切り替えて試してみて改めて気づいた。
字幕で見るとなんか昔の雰囲気と違う。

オリジナルの役者さんと声をあててる声優さんの声の質やしゃべりかたがかなり違うんです。昔見たシャトナーのカークは沈着冷静で品格のある感じだったけど(それにしては女たらしな点がかなりギャップだった)、あれは声をあてていた矢島正明さんの声質やしゃべり方に負う点が多かったのねー。オリジナルのカークはもっと熱血な感じだ。
声が変わるとキャラも変わるんだな。ううむ。


【ここが美味しい名シーン】

今回いちばん笑えたシーンは、やっぱりアレ。
「新種クアドロトリティケール」でクリンゴン人にキャプテン・カークの悪口を言われ、激昂するチェコフを余裕でなだめるスコッティ。ところがエンタープライズ号の悪口を言われたとたんにブチ切れ大乱闘。
あとでスコッティに事情聴取したカークの「オレよりエンタープライズの方が大事なのかよ……」と内心思いっきり突っ込んでいるに違いない表情が最高(爆)。
このエピで出てくるトリブルという宇宙生物、飼育上の注意を守らないととんでもないことになってしまう(この場合は売主がうっかりか故意にかそれを伝え忘れたため大騒動になるんですが)という点では、あの「グレムリン」の先駆的要素もあるような気がします。


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