スター・トレック スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD] スター・トレック (製作年度: 2009年)
レビュー日:2009.6.23
更新日:2009.11.10
評価:★★★★★
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解説(Yahoo映画より):
テレビドラマや映画でおなじみの「スター・トレック」を再構築し、ジェームズ・T・カークの若き日を描くスペース・アドベンチャー。あるアクシデントによりUSSエンタープライズに乗ることになったカークが、宇宙への冒険で成長していく姿を描く。監督は『クローバーフィールド/HAKAISHA』のJ・ J・エイブラムス。カークを演じるのは、『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』に出演しているクリス・パイン。1960年代から続く人気シリーズが、最新のVFXを駆使してどう生まれ変わったのかが見どころ。


「昔の恋人」にそっくりの人(笑)

昔むかしTVで「宇宙大作戦」やってた頃のファンです(年齢がばれる……)。たぶんテレビ番組はほとんど見てるしノヴェライズ版もほとんど読んでるはず。

正直もう懐かしさに感動しちゃったのであまり冷静な評価はできません。
いうなれば「昔の恋人」にそっくりの人(それも自分が恋してた頃の年齢の)に出会った気分?
本人じゃないことはわかってるんだけど、「あーわたしはあの人のこんなところに惚れてたんだ」と再確認させられるような、あの頃の気分がよみがえるような……

カーク、スポック、マッコイ、ミスター・カトウ(いやスールーか)、チャーリー(スコッティ)、チェコフ、ウーラ(ウフーラ)……みんな昔の「彼ら」とは別人が演じているのだけど、その立ち居振る舞いやセリフは紛れもなく昔の「彼ら」で、もう懐かしさ全開。個人的にいちばんウケたのはなぜかドクター・マッコイでした。初登場シーンから文字通り「リアル・マッコイ」で頬が緩みっぱなしになった(笑)。他のクルーより若干年上、という設定から「宇宙大作戦」ではけっこう分別くさいこと言ってたけど、そういえばこの人も、ここぞという時には規則破り倒して強引かましてたっけ(懐)、と思い出したりして。

わたしの脳内での「スター・トレック」のイメージは、テレビのオリジナルシリーズが原型となりつつも、ノヴェライズ版読むうちに40年前の特撮の古臭いところが抜け落ちていくぶん美化されたものなので、そういう意味では今回の映画がいちばん自分のイメージに近いものなのかも、と思います。

でも今回の話の作り方はある意味うまいかもしれない。タイムスリップによって過去が改変されてしまっているので、オリジナルシリーズと違う部分も「パラレルワールドだから」という一言で説明可能(笑)。
おかげで「キレるスポック」なんて、オリジナルシリーズではまずありえないシーン(実はもっとありえね〜シーンもあった……)も見られます。

若干突っ込ませて下さい(笑)。
「コバヤシマル・テスト」を作ったのがスポックだったとは……
特技「フェンシング」だったはずのスールーのソードアクションが完全にチャンバラでした(それもカンフーの入った)。いやかっこよかったからいいんだけどさ(爆)。
カークがわざとスポックをキレさせてエンタープライズ号の指揮権を奪うんだけど、その方法を教えるのが「あの人」だとは……いくらなんでもそりゃヒドすぎるだろ〜。

しかし本当に「作ってくれてありがと〜!」と関係者各位にお礼言いたい作品になりました。

音楽の雰囲気だって話の内容だってけっこう暗いしシビアだったのに、でも見終わった後不思議なほど「明るい未来」というイメージが残りました。それはやっぱり、どんなに今の状況暗くたって負けないぜ、というエンタープライズのクルーの若さと根性(笑)に負うところ大きいのかな、と思ったりして。

中でもやっぱり、何度崖っぷちに追い詰められようと力技で乗り越えちゃうカークの往生際の悪さ、いや、バイタリティはスゴイ。

圧倒的に不利な戦況を指摘するスポックに対して
「なにか方法はあるはずだ」と食い下がり、
地面に叩きつけられる直前まで諦めずに仲間に救助を求め、
最後のピンチの時(あれもエンタープライズの置かれた時空的状況そのものが「崖っぷち」)には
お約束の「なんとかしろ、スコッティー!!」

あれでクルー全員の力を120%引き出しちゃうところが彼の才能でありキャプテンの資質なんだな、と思ったりして。

たとえそれが根拠のない自信(笑)であっても、みんなの前では絶対に弱みを見せない。
たとえ数にまさる相手に囲まれてボッコボコにされても、反撃の機会をとらえたら一気に情勢をひっくり返すかもしれない、と思わせる。
(やられっぱなしになる場合もあるけどw)
これも「リーダーの素質」だと思います。
実際DVDで見直してみると、クルーの誰も見てない場面でカークの顔からいつもの自信満々の表情が消える瞬間があるのですよね。カークだって自分の決断に100%の確信が持てるわけじゃない。でも、何かことがあるたびにクルーが自分の姿を求めて振り返ること、その時彼らにこれっぽっちも不安や疑念を抱かせてはいけないんだ、ということは知っている。だからカークはいつも断固たる表情で決断をくだす。指揮官の責任がどんなに重い負担を強いるものだとしても投げ出さない。投げ出した瞬間、自分が指揮する船の乗員全員に対する責任を放棄することになるのだから。

そんなカークを見て、自分よりもカークのほうがキャプテンに向いてる、と思ったからこそスポックはキャプテンの座を譲り、なおかつ、自分がついてないとカークの素質が充分に生きない、と悟ったからこそ(未来の自分の助言もあったにせよ)、最後にエンタープライズに戻ってきて副長を志願したんじゃないのかなぁ。そこいらへんはやっぱりヴァルカン人らしい論理的決断ではないかと。
(会社だったらそこそこ仕事も覚えた中堅どころが、大学出たての若造の部下になるようなもんですよ。感情的な地球人だったらフツー面白くないでしょw)

後は下っ端士官経験皆無でキャプテンになっちゃったカークが、このへんのキャリア不足をどう補っていくのか(先輩将官連中のヤッカミとかいろいろありそうだし)、スポックとマッコイがカークの未熟さをどう補っていくかがこれからの見ものだなぁ、と思います。

【ここが美味しい名シーン】

これはなんといっても、キャプテン・パイクが敵船におもむいた後の行動方針を巡る対立で、キャプテン代行のスポックに氷の惑星上に放り出されたカークが、異星の怪物に追われて逃げ込んだ洞窟で未来からきたスポックと出会う場面でしょう。

スポックはそれが若い頃のカークだと即座に見抜き、声をかけます。初対面の相手に親しげに話しかけられとまどうカーク。そんなカークにスポックは、
「わたしはこれまでずっと そしてこれからもずっと あなたの友だ」
と告げる……

いやここは映画館でもウルっときた。このセリフ、映画「スター・トレック2 カーンの逆襲」でエンタープライズ号を救うため大量の放射線を浴びた瀕死のスポックが、駆けつけたカークに言う最期のセリフなんです。
(映画館であれ見た時は、続編で生き返るなんて思ってなかったから本気で泣いた……)

実際ここでスポックを演じているレナード・ニモイのカークを見るまなざしが、なんともいえない懐かしさにあふれているんですよね。このあたりもしかしたら演技というより素でやってるかも、と思わせるところも。
ニモイにとっても、若い役者が昔の仲間を演じるのは感無量だったということですから。(ドクター・マッコイとかスコッティとか、昔演じた役者さんがもういないキャラもいますしね……)

そのシーンをさし置いて極私的に一番好きなシーンは、「コバヤシマル・テスト」の不正問題で謹慎処分となったカークを置いてエンタープライズに乗艦すべく歩き出したドクター・マッコイが立ち止まり、一瞬ためらって、
「えい、畜生」
とUターンしてきてカークの腕をつかみ、「いいから来い」とエンタープライズ(行きのシャトル)に引っ張っていく場面。

ドクター、あなたってホントいい人だ……


【おまけ】

映画見に行った時は「きゃ〜ドクター〜」って感じでしたが、DVDであらためて見直すと、スールーもなかなかいいキャラだ。大真面目にボケられるところはタダモノじゃない(笑)。
先代スールーはいかにも日系人、という感じだったけど、今度のスールーはやっぱり大陸系アジア人って雰囲気だなぁ。初ワープで思い切りずっこけてくれましたが、敵地に飛び込んだ時の操縦ぶりはなかなか堂に入ったもの。チェコフ君とのコンビネーションもいい感じだし、先行きが楽しみです。

カークとの関係は、前は完全に上司と部下という感じだったけど、今回はもうちょっと距離が近い。なにせはじめて肩を並べて戦った戦友だもんね。でもってカークに命を救われちゃったから、この先「何があってもついて行きますよ、キャプテン」って感じかな。

操舵席から振り返ってカークと目を合わせ、にこっと微笑むシーンがいいです。


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