鞍馬天狗 [DVD] 鞍馬天狗
レビュー日:2008.3.7
更新日:2009.11.2
評価:★★★★★


内容紹介(AMAZONより):
"変身ヒーローの元祖、嵐寛寿郎主演の映画で知られる、大佛次郎原作の時代小説「鞍馬天狗」を、懐かしいレトロなイメージを存分に生かしながら、まったく新しい現代の鞍馬天狗としてスタイリッシュにドラマ化。鞍馬天狗を演じるのは、人気狂言師の野村萬斎。

開国か攘夷か、佐幕か尊皇か。幕末、行き先の見えぬ中、武士たちは己の信念がゆえに殺し合い、庶民は恐怖におののく闇の時代。その中に颯爽と登場した快男児・鞍馬天狗の大活躍を描く。"
舞台は京都。零落した公家の嫡男であり、幼少から武術の鍛錬をしていた小野宗房(野村萬斎)は、罪なき人々が傷つく世の中を憂い、その類まれな正義感から勤皇志士=鞍馬天狗となって悪を退治することを誓う。公卿を捨てた宗房は、通常は倉田典膳と名乗って人の良いチャーミングな浪人として振舞う一方、ひとたび我慢ならない悪党が現れるや、黒頭巾を被り、白馬に乗った無敵の剣士・鞍馬天狗に変身するのである。
<壱>
第1回「天狗参上」 第2回「宿命の敵」
第3回「石礫(いしつぶて)の女」 第4回「山嶽党奇談 前編」
<弐>
第5回「山嶽党奇談 後編」 第6回「天狗と子守歌」
第7回「角兵衛獅子 前編」 第8回「角兵衛獅子 後編」(最終回)
原作:大佛次郎 「鞍馬天狗」より
脚本:古田 求 川上英幸
音楽:服部隆之
美術監修:西岡善信(映像京都)
出演:野村萬斎 京野ことみ 羽田美智子 石原良純 徳井 優 杉本哲太 緒形直人 ほか
〔特典映像〕プレマップ、新撮インタビュー(予定)



眼福! 萬斎天狗

「鞍馬天狗」に関しては、原作を読んだこともなければ有名なアラカンの映画も見たことがありません。予備知識としては、大昔、学研の雑誌にそれをモデルにした漫画が載ってたのを読んだ覚えがあるのと、何度かパロディを見かけたことがあるだけなので、テレビドラマに関してはほとんど先入観なしで見ました。だから「原作と違うぞ〜」という不満もなく楽しめたのがよかったのかもしれない。

まあツッコミ所は満載のストーリー展開でしたが、そこはそれ、理屈抜きで楽しむエンタメだと思えば面白いかも。なんたって萬斎さんは動き見てるだけで目の保養になるし。主人公の設定を公家の御曹司、としたのは正解ですね。萬斎さんはやっぱり武家の感じじゃないもの。初登場時の服装がちょっと牛若丸っぽいのも楽しい。

わたしが野村萬斎さんに惚れた(笑)のは、映画「陰陽師」からなのでかなり遅まきのファンだけど、伝統芸能に裏打ちされた立ち居振る舞いの美しさは垂涎もの。特に時代劇をやると、男の着物姿のかっこよさを余すところなく引き出してる感じがして、この「よさ」がわかる日本人に生まれた幸福をかみしめたい気分にもなります(おいおい)。

で、萬斎さん目当てで見始めたのだけど、そしてもちろん最後まで萬斎さんLOVE目線は変わらなかったのだけど、緒方直人の近藤勇にも「か、かっこいい」とよろめきそうに……(笑)
お笑い担当の桂小五郎(石原良純)も、最初は違和感ありまくりだったけどこれはこれでいいなぁ、と思えるようになり、幾松のかっこよい色っぽさにノックアウトされ、けなげな杉作ちゃんに胸キュンし……

あーなんで8回で終わっちゃうんだぁ。もっと見たかったよぉ。続編プリーズ。


【ここが美味しい名シーン】

第4回「山嶽党奇談 前編」
三島屋に世界地図を見せられて「世界はこんなに大きいのか…」とつぶやく鞍馬天狗。
妙にかわいくてツボでした。そうかー、大人になるまで鞍馬の山奥で育っちゃったからね〜。
(まぁ、当時の日本人で世界の広さを知ってる人のほうが少ないんだけど)
糺の森で顔を合わせた鞍馬天狗と近藤勇がはじめて剣を交えるも、途中で山嶽党の襲撃を受け、勝負はひとまずお預けとして共闘するシーンがこれまた名場面。近藤勇の「剛の剣」と鞍馬天狗の「柔の剣」の対比がすばらしくて目を奪われます。

第5回「山嶽党奇談 後編」
今村松慶の屋敷の様子を探るため、石つぶてを投げて見事ホウキの柄に命中させた典膳さんと、拉致られた恨みを晴らすため障子越しに鉄瓶のフタ投げて大塚さんの額にクリーンヒットさせた白菊さん……
星飛雄馬ばりのコントロールは小野家の血筋なのかしらん(爆)。

第7回「角兵衛獅子 前編」
杉作ちゃん役の少年がまたいい演技してるのよね。鞍馬天狗に対する憧れのまなざしなんて、目にハートが浮いてんじゃないか、と思うくらい(笑)。
ここでよかったのは鞍馬天狗を探し回る杉作ちゃんの前に倉田典膳のまんまで白馬に乗って現れるシーン。あれに乗っけてもらえるなんて、今で言えば革ジャンのかっこいいおじさんがハーレーダビッドソンに乗っけてくれるようなもんですよ。わたしが少年だったらまず惚れる(爆)。

第8回「角兵衛獅子 後編」
最後まで萬斎さんは素敵だ〜。
正体がバレて大阪城の侍たちに追われる場面では華麗な短銃さばきを見せるし……予備の弾くらい用意しとけよ、とツッコんじゃいましたが……群がる雑魚どもを切り伏せつつひらりと飛ぶ場面では「おー、飛んだぁ」と歓声上げてしまった(笑)。
火縄銃で撃たれて追い詰められ篭城していた米倉からズタボロになって出てきた場面も……あれ、もしかして3日くらい本当に絶食してないか? やつれて目だけがぎらぎら光る表情はまさしく「凄艶」そのもの。あの姿に悩殺されてしまった人もかなりいるようです。
桂小五郎と夜桜の下で語り合う場面もねぇ……桜背負って微笑む姿が決まる男ってそういないでしょ。
いやでも緒方直人もカッコよかったしー。最後の南禅寺山門下での決闘シーンもよかったわ。怖い顔しながらもなんだか嬉しそうな近藤勇の表情もツボでした。剣豪としては、互角の相手とハンデなしでやるタイマン勝負ほど燃えるイベントはないんだろうなー、やっぱり(笑)。


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