K-20 怪人二十面相・伝 通常版 [DVD] K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝 (製作年度: 2008年)
レビュー日:2009.12.6
更新日:2009.12.9
評価:★★★★
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解説(Yahoo映画より):
江戸川乱歩の小説に登場するダークヒーロー、怪人二十面相の真相に迫るアクション・エンターテインメント。北村想の「完全版怪人二十面相・伝」を原案に、「アンフェア」などを手掛けた佐藤嗣麻子監督が現代風のアレンジで映像化した。主人公を『レッドクリフ Part I』の金城武が好演するほか、ヒロインを松たか子、明智小五郎を仲村トオルが熱演。 『ALWAYS 三丁目の夕日』のスタッフによるノスタルジックな映像美も見もの。


ノスタルジックな冒険活劇

しかし金城武には白い鳩がよく似合う〜(爆)。

やっぱり子どもの頃ルパンやホームズや少年探偵団シリーズ読んで育ったわたしですから、懐かしいキャラではあるんですけどね。それだけにあの展開はちょっと衝撃でした。
昔はやっぱ明智小五郎ってカッコイイな、と思ってたので、仲村トオルの明智小五郎はちょっとキザでイヤミなキャラになってしまったのが残念。
でもラストでは髪型のせいか妙にかわいかったな。

それよりも金城武。いやもうカワイイのなんのって。笑うとエクボができるんだこの人(笑)。「レッドクリフ」でも見せたあのキラキラお目々は健在。

「レッドクリフ」でアクションしなかった分、こっちではアクション満載で、スタント使ってるにしろよく頑張ったなぁ。
怪人二十面相と対決するための修行シーンなんてもう……地図に直線を引いて、そのとおりにまっすぐ走る、というものなんだけど、途中の障害物を飛び越えよじ登り、走る車の間をすり抜け、ただひたすら走る……いやもう何度「あんたはジャッキー・チェンか!」と突っ込んだことか(爆)。

多用されるワイヤーアクションも、その嘘っぽさを逆手に取ってスパイダーマンばりの秘密兵器にしてしまったところなどうまいなぁ、と思うし、それをまた自在にあやつる金城武がめちゃカッコイイ。
最初に使ったときに「すげーーーーっ! 俺!」と自分でウケてるシーンは笑えましたが。

でもマジでジャッキーに近い路線(ただしもう少し二枚目寄りw)狙えるのは金城武しかいないかも。イケメンでアクションもかっこよく決められて、なおかつ天然ですっとぼけたところがあってコメディもやれるってのは貴重な人材じゃないでしょうか。演技力もあるし、いい作品にめぐりあって大きく育っていってくださいまし。


【ここが美味しい名シーン】

第二次世界大戦が起こらなくて、明治からの階級社会がそのまま続いたパラレルワールドの帝都東京。金城武演じる遠藤平吉は小さなサーカスの軽業師。怪しげな男に頼まれた仕事を引き受けたばかりに二十面相の濡れ衣を着せられ、裏社会に追いやられるはめに……

このあたりまでの展開は徹底的に暗くて閉塞感たっぷり。最初こそサーカスの花形として脚光を浴びる平吉君も、誤認逮捕されて官憲の暴力に痛めつけられ、メカの天才源治をはじめとする泥棒長屋の人たちに助け出されても、自分の無力感をとことん味わうしかないという救いのない展開。

ところがここまで我慢して筋に付き合ってくると、源治に秘伝書を渡されて泥棒修行を始めるあたりから話の展開も映像もスピード感が増していく。

秘伝書の最初にある「地図に直線を引いて、そのとおりにまっすぐ走るべし」という教え、これがよく考えるとなかなか深い。表面的には途中の障害物を突破してゆくことによって身体能力を鍛えるというものだけど、つまり、地図という地上の約束事から抜け出して行くことによって、閉塞的な社会のしがらみから自由になっていくプロセスをも意味しているのですよね。

塀を乗り越え、建物をよじ登り、屋根を駆け抜ける平吉君の行く手を阻むように立ちはだかる鉄塔。その鉄塔に対峙する平吉君の、闘志あふれる後姿がまたとてもいい。

さらに源治の開発した伸縮自在のワイヤーを使いこなすことによって、重力のしがらみからも抜け出してゆく平吉君。普段は手拭い首に巻いた風采のあがらない長屋の住人然とした平吉君が、髪をまとめて黒装束に身を固めるとまるで王子様のような気品さえ身につけてゆく。
そして身分社会の最下層の一員である平吉君が、華族の一員である明智小五郎とさえ対等に口をきき、お姫様であるヒロインに「平吉さま」と呼ばれるようになる。昔ケビン・コスナーが演じた「ロビン・フッド」の原題は「Robin Hood Prince of Thieves」というものだったけど、ラスト、サーカス小屋に戻る望みは絶たれたけどこの帝都東京を舞台として自分なりのサーカスをやっていくんだ、と決意した平吉君は、まさしくアウトロー界のプリンスとしてはばたく自由を獲得するのです。


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