THE MYTH 神話 [DVD] THE MYTH/神話 (製作年度: 2005年)
レビュー日:2009.12.8
更新日:
評価:★★★★
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解説(Yahoo映画より):
世界のカンフー・スター、ジャッキー・チェンと『ファイナル・プロジェクト』のスタンリー・トン監督が手を組んだ歴史武侠アクション大作。『アウトライブ飛天舞』のキム・ヒソンが天女のようなヒロインを熱演し、その美貌で観客を魅了する。『リベラ・メ』のチェ・ミンスと『ダブル・ビジョン』のレオン・カーフェイという、韓国と香港のスターの共演も実現。2000年前から現代に到る壮大なスケール愛の物語と、命がけで撮影された本物のアクションに息を呑む。


ジャッキ〜!(泣)

今まで見たジャッキー映画の中では一番お話的に切なかったかな。
秦の始皇帝の時代の将軍モン・イーとその生まれ変わりらしい現代の考古学者ジャックとの二役設定で、一作でふたりのジャッキーが見られる「一粒で二度美味しい」映画。舞台になってたインドや中国の大自然や古代遺跡も映像的にキレイだったし。

現代パートでコミカル色を出した分、モン・イー将軍は徹底的にシリアスに演じてたけど、これがなかなかよかった。無骨だけど義に厚くて部下(と朝鮮のお姫様)に慕われる貫禄あるキャラを好演。こういう若い頃じゃできなかった役もどんどんやったらいいのになぁ。本人的にはコメディ部分が入らないと落ち着かないんだろうけど(笑)。

それに「シャンハイ・ヌーン」の時にもちらっと見せてた槍さばきが存分に見られたし……ジャッキーの槍術(棒術)って結構かっこよくて好きなんだけど、現代劇じゃあまり使える場がないものねぇ。
でも大臣の姦計にはまって死地に追い込まれ、たったひとりで大軍相手に戦うジャッキーはなんか悲壮感ただよって凄かった。愛馬「黒風(ヘイフォン)」との別れの場面も泣かせるし、最期はもう……モン・イー将軍視点のカメラアングルと最後にちらっとうつった彼自身の姿で想像つくけど、うわーんムゴ過ぎる(号泣)。

せっかく生まれ変わってめぐり合ったお姫様とも結局悲恋で終わってしまって、幕切れはちょっと寂しかったな〜。
でも現代パートでジャックが住んでる船はステキでした。研究費カットされてマンション売り払ったにしてはあの船も結構豪華だと思うんだけどね。住まいのセンスはなかなかなのにファッションセンスはイマイチ……特に下着。あれはなんだ〜! (爆)


【ここが美味しい名シーン】

美味しい、というより泣けるシーンなんですけどね。
始皇帝の妃のひとりとなるために輿入れしてきたユシュウ姫とそれを迎えに来たモン・イー将軍。ユシュウ姫の輿入れを阻止しようとする一派の襲撃を受け、乱戦の末姫と将軍はふたりで逃げ延びることに……
ふたりで助け合って苦難の旅路のはて、やっと秦の国境にたどり着くんだけど、その時にはすでに愛が芽生えちゃっているわけです。秦に入れば皇帝の妃と臣下というしがらみにとらわれるわけで、いっそ死にたいと嘆く姫にモン・イーは、国のためを思えばこそ嫁ぐ決心をして来たのでしょうと諭す。
(自分も迎えに行って姿見たとたんに一目惚れしてるくせにもう……無粋な奴)

で、姫が殺し文句を放つ。わかりました、生きます。あなたのために、と。

わたしのレゾンデートルはあなただ、と宣言しちゃった姫の言葉の重みを、モン・イー(の生まれ変わりであるジャック)は二千年後に思い知らされることになるのです。

始皇帝の死期がいよいよ近づいた、という時に、不老不死の仙薬を届ける使者が反乱軍に阻まれた、という知らせが入る。皇帝が死ねば妃たちも殉死させられるわけで、皇帝のため、というよりユシュウ姫を助けたい一心で出陣したモン・イーは、仙薬を配下のナングンに託し、「妃を守れ」と命じて自分は反乱軍(とは見せ掛けで、皇帝に長生きしてもらいたくない宦官趙高と大臣李斯の差し金)の行く手に立ちはだかり、壮烈な戦死を遂げる……

二千年後、前世の記憶に導かれるように始皇帝の地下宮殿にたどり着いたジャック。彼を迎えたのは、仙薬の毒味を大臣に強要され、結果として不老不死になってしまったユシュウ姫とナングンでした。
ナングンに自分と別れた後のことを問われたジャックは、モン・イーの最期を思い出す。その話を聞いた姫は、モン・イーが自分を置いて逝ってしまったことを知るのです。
そして目の前にいるジャックが、確かにモン・イーの生まれ変わりかもしれないけれど、姫の愛した人、生きる理由だったモン・イーではないことも。

地下宮殿の秘密を手に入れるためにジャックを追ってきた一味との戦いの末、崩壊し始める地下宮殿。ジャックは姫に脱出を促すが、姫はそれを拒み崩壊する地下宮殿と運命をともにする……

ひとときは再会の喜びに酔った姫。でも、人類究極の憧れである不老不死となることは、つまり止まった時間の中に永遠にとらわれてしまうこと。皮肉なことに、姫を守るために命を落とし、二千年という時の流れの中で転生を繰り返してきたモン・イー(清朝末期にも一回転生してたでしょ(笑))と姫との間には、皇帝の妃と臣下の将軍、という身分の違いよりも深い、越えられない溝ができてしまったのです。

それを越えるためには姫もまた輪廻の中に戻るしかなかったのかもしれません……「わが終焉は、わが新生の始めぞ。(T・S・エリオット)」という言葉の通り。

「わたしはモン・イーを待つ」との言葉を残して地下宮殿に戻っていった姫。それをなす術もなく見送るジャックの表情が哀しい……

できれば、宮殿の崩壊によって(たぶん)止まった時間から解放された姫とジャック(モン・イー)が、次の世では今度こそ結ばれるのかも、という希望を持たせるようなラストにしてほしかったな、と思ったりして。


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