リトル・ブッダ [DVD] リトル・ブッダ (製作年度: 1993年)
レビュー日:2010.10.31
更新日:
評価:★★★★
Yahoo映画リンク
IMDBリンク


解説(Yahoo映画より):
ベルトルッチらしい美しい場面で綴る、魅惑的な輪廻転生譚。案内役となるのはアメリカ・シアトルの9歳の少年ジェシー。突然訪れた三人のラマ僧が彼の前にひざまずく。少年を仏陀の生まれ変わり、活仏だと言うのだ。父と共に未知のチベットに旅した少年は、そこで太古の偉大な王子ゴータマの伝説を学び、その姿を目の当たりに見て仏性に目覚めていく。インド・ロケによる王子が栄華を究めるシークェンスや、彼が悟りを開いて仏陀となるシーン等、SFXも絶妙で、映像的には大変見応えがある。


西洋目線の仏教入門

アメリカのシアトルで、建築家の夫と数学教師の妻と一人息子のジェシー、というそこそこ裕福なエリート一家のもとに、ある日突然ブータンに亡命していたチベットの高僧ラマ・ノルブが現れて、「あなた方の息子はラマ・ドルジェの生まれ変わりだ」と告げる。

いきなりそんなこと言われたって……ととまどう夫妻と、ノルブに仏陀の生涯を書いた本をもらって仏教の教えに興味を抱くジェシー。豊かで清潔だけどなんとなく寒々しいシアトルの風景と、素朴だけど美しいブータンの風景が交錯する中に、2000年前のシッダルタ王子の物語が織り込まれて、多少話としては散漫な感じになってしまったけど、なかなか面白かったです。

監督はベルトルッチで音楽は坂本龍一、という「ラスト・エンペラー」コンビもさることながら、この映画でシッダルタ王子やってるキアヌ・リーブスが美しいです。出家してからはすっぴんになってしまうけど(笑)、王子さまメイクがまた似合うんだな。これは一見の価値あり。

それと、なんとなく昔から知ってるお釈迦様のエピソードが、ヨーロッパ目線で描かれるとこうなるのかーといったあたりも面白かった。
日本人にとってはなじみ深い仏教も、実はインドで成立してから中国や韓国を経由して日本に届くまでに、オリジナルとはかなり違った形になってきてるのも事実で、オリジナルに逆に西洋風の味付けがされただけでずいぶん違ったものに見えるのはちょっとした驚き。

キアヌ・リーブスのお釈迦様だって、最初にあの姿見たら違和感ありまくりだろうけど、豪奢な宮殿で暮らすシッダルタ王子時代と、汚くやせこけた苦行時代(もちろんあの「スジャータ」のエピソード付き)を経た後、大木の下で悟りを開く姿にたどりつくと、なんとなくこっちのほうが元の姿に近いのかなーという気もしてくるから不思議です。
アジア系の遺伝子持ってるとはいえ、基本西洋人のキアヌが扮するお釈迦様って、そういえばなんとなくガンダーラ仏に似てる気がする。

はじめはたぶん、訪ねてきたチベット僧たちに一番うさんくさげな視線を向けていたジェシーの父親は、ビジネスパートナーの破産とその死に直面して、だんだん考え方を変えていく。そしてノルブたちに導かれてジェシーと一緒にブータンを訪れるのですが、そのあたりから重要なモチーフとなっていくのが「般若心経」。

日本人にとっては「色即是空」などすっかりおなじみになってしまった概念だけど、改めてさてその意味をどこまで理解しているかと問われると難しい。
そんな概念を英語で説明されるとまた新鮮な感じがするし、その「般若心経」を唱えるシーンで、(多分チベット語で唱えているんだろうけど)最後の「羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶」のくだりだけは日本もチベットも同じもともとのサンスクリットで唱えているので、多少なまりの違い(笑)はあるけどああ一緒なんだなー、と、なんとなく親しみを感じちゃったりするのも面白いです。

ラスト、転生したラマ・ドルジェとの対面を果たした喜びと安堵に包まれながら往生をとげるノルブと、その転生を暗示させるシーンが印象的。そしてエンドタイトルの後にあるワンシーンが、これまたとても印象的なので、最後まできっちり見ましょうね。


しかし、仏陀を守る大蛇の話は知ってたけど、ああいう風に映像化されると……ちょっと笑える。


【ついでと言ってはなんですが】

実はこれもDVD鑑賞作品ではありません。TSUTAYAでもまわりはDVDになってるのにこれだけビデオ。どうやら絶版になってて入手困難らしいです。意外によかったので安いのあれば買ってもいいな、と思ってネットで相場見たらとんでもないプレミア価格ついてました。

でもこれもデジタルリマスター版が出る、といううわさもあるので、出たら買ってしまうかも……
実は「プロジェクトA」、新たなリマスター版が今年12月に発売されると知って予約してしまったわたし(自爆)。


INDEX