やんばるエコツアーレポート(1999.1.30 - 2.1)



1月31日(日)晴れ

今日はいよいよやんばるの森に入ります。 水飲み場

朝食後、出発したわたしたちは、まず国頭村の森林公園に着き、そこでやんばるの森について簡単な説明を受けた後、大国林道に入りました。
大国林道とは、大宜味村と国頭村を通っている林道の名前で、それぞれの村の名前をとって名付けられています。長尾橋という橋のたもとには、湧き水をひいた水場があって、わたしたちが着いた時も、車にポリタンクを積んで水を汲みに来ている人がいました。飲んでみると、確かに舌ざわりの柔らかい、おいしい水でした。

長尾橋からは、沖縄本島の最高峰与那覇岳(503m)へと続く山々と、それを覆っている「やんばるの森」が一望できます。イタジイ・スダジイなどで構成された森は、よくブロッコリにたとえられるそうですが、まるで緑がモコモコと泡立っているようで、植物の力そのものが後から後から湧き上がってくるのを見ているような気がしました。

わたしなどの目には原生林そのものに映ってしまう森ですが、ガイドしてくれた国頭村役場の人の説明によれば、このあたりの森には人の手が加わっており、炭焼き用の木や建築用の材木などが切り出されていたのだそうです。ここから切り出された材木が、遠く首里の御殿を建てるために運ばれていく時の唄が「国頭(くんじゃん)サバクイ」。なかなか威勢のいい唄で、わたしは大好きです。

次にわたしたちは、比地の集落に入りました。ここから山中に入ったところにある比地の大滝をめざす前に、集落の共同売店に立ち寄ります。比地の共同売店は鉄筋コンクリートの立派な建物でした。どうやら商店の機能だけではなく、集落のコミュニティ活動の場としての役割もあるようです。

さて、いよいよ比地大滝へ出発。遊歩道の入口近くの川原に、遊泳禁止の立て札が、日本語と英語の両方で書かれていました。このあたりは米軍基地の関係者にとって、格好のトレッキング・コースらしく、この日もわたしたちは子ども連れの一家を含む数人の外国人とすれ違いました。

遊歩道は実にきちんと整備されています。確かにこれ以上自然破壊をひろげないためには、山に入る人たちが定められたコースをはずれないように、ルートをきちんとすることが必要なのでしょうが、どうも「やんばるの森を歩く」という実感に欠けるのは否めません。この日わたしたちは、ガイドである国頭村役場のお兄さんの案内で、途中でルートをはずれ、靴を脱いで昨日喜如嘉の共同売店で買ったインドネシア製ゴム草履にはきかえ、比地川の渓流をざぶざぶと歩きました。水はもちろん冷たかったです。でも、考えてみれば一月末に、こうやって水の中を歩いていけるということ自体、本土では考えられないことでもあります。

滝まではゆっくり歩いて一時間弱の道のり。手前の休憩所でお弁当を食べた後、いよいよ滝へ。滝壺は谷あいにあって涼しく、天然記念物の野鳥、アカヒゲも姿を見せてくれました。しばらく休憩した後、わたしたちはもときた道を引き返しました。

国頭村の公用車      国頭村の公用車。

ここまで大宜味村、国頭村というやんばる地方のふたつの村を歩いてきたわたしたちは、3つ目の村、東村へと向かいました。塩屋湾の奥に進んで沖縄本島を横断。いよいよ沖縄本島の東海岸へ。今日の宿は、東村の平良という集落にある、「マリンガーデン東」。鉄筋コンクリート2階建てで、一階は食堂兼スナック、二階が客室で、全室トイレ・バス付きという、とても快適な宿です。

沖縄本島の東海岸は西海岸ほど観光化が進んでいないだけに、印象もかなり違い、なんとなく、「ふだん着の沖縄」という感じがします。まだ明るいうちに宿についたので、ひとやすみした後、集落の売店で買い物をしたり、近くにあるというサキシマスオウの木を探しに行ったりしました。残念ながらサキシマスオウの木は発見できませんでした。あまり案内標識が完備していないため、途中で不安になり、引き返してしまったからです。

夕食後、食堂でみんなとビールなど飲みながら話をしました。参加していた沖縄県の女性職員の「わたしたち本土に仕事で行くときは、電車に乗るのが楽しみでね〜」という言葉が印象的でした。

夜が更けてくると、スナックには近隣の人たちが飲みに来ました。このあたりにはあまりこういう店がなく、あとはタクシーで名護の街にでも行くしかないので、必然的にここが村の人たちの社交の場となるわけです。

酔い覚ましに、と女性メンバーのひとりKさんとカウンターでコーヒーを飲んでいると、どやどやっと5〜6人の外国人が入ってきました。カウンターにいたネーネー(おねえさん、の意)の話では、近くの基地に勤めるアメリカ兵のグループだそうです。彼らはさっそくビールを注文し、カラオケの本をめくり始めました。ネーネーはわたし全然英語ダメだからさー、といいながら、車を運転してきたメンバーが水をくれというと、「はーい、ワーラーね」と、しっかり「アイスワーラー英語」で応じています。

わたしはそのうちネーネーに呼ばれました。彼らがカラオケを歌いたいと言ってるので、英語の曲を捜すのを手伝ってやってくれ、というのです。カラオケ本をぱらぱらめくると、英語の歌詞や題名はずいぶんあるのですが、全部いまどきの日本のポップスなのです。わたしは普段カラオケをやらないので、正直言ってあきれてしまいました。日本人なら、もうちっと日本語の歌詞で歌わんかい!

一緒に歌をさがしているアメリカーのにーちゃんが名前をきいてきました。「マイ・ネイム・イズ……」と名乗っていたが、名前は忘れました(笑)。おまけに、やたら接近してきます。もしかしてこいつ、ナンパのつもりか? おいおいっ!

カラオケマシーンをいじっていたネーネーが、プレスリーの「ラブ・ミー・テンダー」をようやく探し出しました。実に体力の要る一日をすごし、日米民間交流に貢献する余力のないわたしは、彼らが歌い始めたのを機に、そそくさと……逃げました(笑)。
 

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