あづみ野コンサート
柳井美加奈
初夏に謳う
2001年5月19日(土)午後6時開演
あづみ野コンサートホール
《プログラム》
1. 水の変態 筝本手 平野 裕子
(宮城道雄作曲) 筝替手 柳井 美加奈
2. 鹿の遠音 尺八独奏 芦垣 一哉
(琴古流尺八本曲)
3. 琉球民謡による組曲 第一筝 柳井 美加奈
(牧野由多可作曲) 第二筝 平野 裕子
十七絃 横山 喜美子
尺八 芦垣 一哉
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4. 花深き処 筝独奏 柳井 美加奈
(幡掛正浩作歌/柳井美加奈作曲)
5. 春の海 横山 喜美子
(宮城道雄作曲) 尺八 芦垣 一哉
6. 花舞 第一筝 柳井 美加奈
(牧野由多可作曲) 第二筝 平野 裕子
十七絃 横山 喜美子
《解説》
水の変態 
霧 小山田の霧の中みち踏み分けて人来しと見しは案山子なりけり
雲 あけわたる高嶺の雲にたなびかれて光消えゆく弓張の月
雨 今日の雨に萩も尾花もうなだれて憂ひがはなる秋の夕暮
雪 ふくる夜の軒の雫のたえゆくは雨のや雪に降りかはるらん
霰 むら雲のたえ間に星は見えながら夜ゆく袖に散るあられかな
露 白玉の秋の木の葉に宿れりと身ゆるは露の計るなりけり
霜 朝日さすかたへは消えて軒高き家かげに残る霜の寒けさ
宮城道雄の処女作で、14歳の時に作曲された。感情表現、情景描写に溢れ
た手事物形式の曲。最初は独奏曲であったが、後に替手がつけられた。
鹿の遠音
秋の深山に遠く聞こえる鹿の鳴き声の描写を曲想としていて、描写的な
性格と音楽的な華やかさをもつ。黒沢琴古(1710〜71)が既存の曲として
伝承した。
琉球民謡による組曲
琉球の代表的な民謡である安里屋(あさどや)ユンタと八重山地方に古くから
伝わる哀愁ある旋律「トバルマ」を素材として作曲された幻想的な組曲。
花深き処
春 そこばくの花散りしきてみ堀べの真昼しづけく春の雨ふる
夏 芝草のしげみにひそみ咲く花の むらさき補足夏逝かんとす
秋 さびさびと水は流れでていたりけり 秋の郡上の八幡のまち
冬 淡雪はみぞれにかはりしきふれど落ちては消えゆるほどのはかなさ
2000年作曲。幡掛正浩氏の歌集「花深き処」より、四季の和歌を一首づつ
抜粋して曲付けを行った。筝歌の美しさ、高貴さの原点にかえったような
歌詞の旋律と、簡潔な筝の手との関わりが巧みに演奏される。
春の海
昭和5年の勅題「海辺の巌」にちなんで作曲された。春の瀬戸内海を船で通
った時の印象にヒントを得て作ったという。
花舞
冒頭に示される主題が時に重く、また軽やかに変容し、最後には舞踏曲風
に発展していき最初に戻って終わる。現代音楽的な音の動きや
鋭角的な拍子で構成された三重奏曲である。