日本共産党「政治資金」の全観察

 

共産党08年度政治資金報告書における財政破綻度詳細

 

MF生作成・投稿

 〔目次〕

     宮地コメント

     MF生−はじめに

   1、財政規模と「交付金」全党で実質規模約400億円

   2、機関紙事業『赤旗』の“粗利益”は約60億円

   3、党費1人当たり金額は幾らなのか

   4、寄付党費の1.8倍。1000万円以上の人も

   5、借入金、その他収入国会議員団が1.2億円納入

   6、人件費−“実質収入に対する比率は60%以上

   7、資産広い土地、国債や墓地も

   8、地域別の財務指標と党勢−相関関係はある

   9、政治資金数表−EXCEL表、政治資金グラフ

     おわりに

 

 〔関連ファイル〕        健一MENUに戻る

     『日本共産党08年度政治資金報告の表裏』

     『じり貧的瓦解第4段階−赤旗新聞社経営破綻・選挙財政破綻』

     総務省『日本共産党08年政治資金報告書』 党員数報告

     共産党『日本共産党08年政治資金報告』 党員数隠蔽

     共産党『日本共産党の財政−政治資金収支報告』95年〜08年

     MF生作成表『総選挙小選挙区−共産党の成績』小選挙区結果沈黙・隠蔽

 

 宮地コメント

 

 これは、MF生さんが作成・投稿した1回目ファイル『総選挙小選挙区−共産党の成績』に次ぐ、2回目のファイルである。内容は、「日本共産党08年度政治資金報告書」に基づく『日本共産党「政治資金」の全観察』であり、党財務全般を緻密に分析した論考である。MF生さんの了解で、その全文とexcel表、グラフの3つを載せた。これは、次の3点において、日本共産党の党財政研究史上初めての画期的な文書となった。

 

 第1、日本共産党08年度政治資金報告書の全面的分析=全観察の意義

 

 日本共産党は、政治資金規正法に基づいて、総務省に毎年、政治資金報告書を提出してきた。それは党財務すべてを含む。共産党は、その内のごく一部だけをHPで公表している。このファイル目次内容やexcel表のデータなどを公表したことがない。しかも、党員数について、総務省には報告するのに、HPでは一貫して隠蔽してきた。

 

 MF生は、これら目次内容やexcel表の膨大なデータを、初めて観察し、公表した。このレベルの作業は、鋭い観察と長大な時間が要る。excel表を見れば、党中央だけでなく、47都道府県委員会・316地区委員会の詳細なデータも判明する。これらの意義はきわめて大きい。文書は、データ上314地区と書いているが、地区委員会実数は316である。

 

 第2、全観察データは、13年間連続の日本共産党財政破綻における08年度の位置づけを可能にした

 

 共産党の党財政破綻・縮小は、1980年赤旗ピーク355万部以降始まった。それは、赤旗30年間連続減紙が証明している。ヨーロッパのコミンテルン型共産党全面的じり貧的瓦解・党員数激減は、日本共産党より早く、1970年代半ばから始まっていた。共産党の内部崩壊傾向からの脱出と生き残りをかけ、必死の模索として開始されたのがユーロコミュニズム運動だった。その結末は、ヨーロッパにおけるほぼすべての共産党の消滅だった。日本共産党の内部崩壊の始まりは、ヨーロッパより数年遅れただけだった。

 

    『コミンテルン型共産主義運動の現状』ヨーロッパでの終焉とアジアでの生き残り

 

 日本共産党HPの政治資金データは、1995年以降の13年間しか載せていない。1997年はなぜかない。私は、官報公表データの内、収入分のみ()にした。ただ、共産党HPは年間党費納入者数を意図的に削除していて、総務省報告にしかない。09年データは、10年9月公表になる。下記()の党費収入減り方テンポは異様である。MF生作成の「08年度政治資金報告書の全観察」は、13年間党財政破綻の流れにおいて、08年度を位置づけることが可能にした。

 

 共産党HPが、政治資金報告書のごく一部の公表をし始めてから、13年目になる。その時点における党財政破綻度合が、共産党員・読者・有権者にたいし、これほど鮮明に、かつ全面的に解析されたのは初めてである。全観察によって、公表以来、13年目の共産党財政破綻レベル・テンポ=共産党崩壊進度を読みとることができる。

 

(表1) 日本共産党政治資金の収入分総務省公表データ

党費収入

機関紙誌書籍

収入合計

党費増減

機関紙増減

1995

13.4

277.9

311.0

 

 

96

14.

270.4

304.0

 

 

98

13.7

272.6

308.5

 

 

99

13.6

256.0

302.3

 

 

2000

13.2

281.1

327.8

 

 

 

 

 

 

 

 

01

12.6

291.7

342.8

 

 

02

12.6

282.1

334.2

 

 

03

12.1

260.0

307.1

 

 

04

11.3

251.2

300.6

 

 

05

10.9

240.7

284.1

24回大会

24回大会

06

10.0

230.9

281.9

 

 

07

9.5

221.5

264.8

 

 

08

9.1

215.5

249.6

1.8

25.2

09

 

 

 

 

 

単位は億円。収入合計は、寄付・借入金などを含む

00年赤旗年度途中値上げ増収01年赤旗年度当初からの値上げ増収

08年増減は、06年1月第24回大会後、満3年間の激減

 

    共産党『日本共産党08年政治資金報告』 党員数隠蔽

    共産党『日本共産党の財政−政治資金収支報告』95年〜08年

    総務省『日本共産党08年政治資金報告書』 党員数報告定期公表→共産党→1の2頁

 

 総務省への共産党平成20年度2008年度分報告は、2009年10月1日にあった。()党費年間総額9億1602万8749円()党費納入党員数数年間延308万8830人である。年間延308万8830人÷12カ月間=25万7402人だった。

 

 党費収入と機関紙誌書籍収入の()8年間増減比較をする。01年から08年までとする。01年とは、赤旗カラー印刷導入により、赤旗年度当初からの値上げ増収となった時点だからである。および、()06年1月第24回大会以降の満3年間の増減比較をする。増減といっても、一貫して減収となっており、増えた年度は一度もない

 

(表2) 党費収入と機関紙誌書籍収入の2つの期間比較

期間

党費収入(億円)

機関紙誌書籍収入(億円)

 

 

減収額

減収率

 

減収額

減収率

01年〜08年の8年間

12.69.1

3.5

27.7

342.8215.5

127.3

37.1

06年〜08年の3年間

10.09.1

0.9

9

230.9215.5

15.4

6.6

 

 この党費・機関紙収入の減収金額・減収%は、何を示しているか。これらの()は、資本主義世界で最後に残存するコミンテルン型前衛党において、()党員の党内離脱=党費納入拒否実態と、()赤旗読者の共産党からの大逃散=赤旗購読拒否実態を、総務省公表の財政13年間データ、および、2つの期間比較データによって証明している。

 

 筆坂秀世は、著書『日本共産党』において、常幹時期の体験として、当時も、共産党本部財政が毎月1億円の赤字=年間赤字12億円、赤旗日刊紙は常時赤字だったと証言している。日本共産党は、党財政面でも、急激に縮小し、財政破綻=内部崩壊しつつある。

 

 第3、「全観察」は、2010年以降も、党財政全面破綻度合を検証する最初の基礎資料

 

 全政党は、毎年、総務省に政治資金報告書を提出する法的義務を持つ。総務省は、それらを毎年9月〜10月にHPでも公表する。(表1、2)は、日本共産党という民主集中制・分派禁止規定堅持の反民主主義政党が、党財政分野においても、全面破綻=内部崩壊しつつある実相を証明した。

 

    『分派禁止規定堅持の反民主主義政党』

       日本共産党常幹党内犯罪党内民主主義抑圧・粛清

 

 今後とも、「08年度全観察」のレベル・範囲で、基礎資料が公表され続ければどうなるか。党財政は、政党存続の根幹の一つである。(1)党員・(2)読者・(3)支部・(5)民青のじり貧的瓦解とともに、(4)党財政でも全面破綻・縮小が続けば、日本共産党というトップ自己保身政党は、財政面からも内部崩壊する。

 

 2013年までに行われる次期総選挙、2013年7月の参院選までに、共産党全面破綻が、政治資金報告書によっても浮き彫りになる。現在、加藤哲郎と私の2人しか使っていない「日本共産党の自然死」展望が、有権者にも具体的に認識されるようになるだろうか。

 

­――――――――以下、MF生投稿―――――――――――――――――――

 

日本共産党「政治資金」の全観察

 

 はじめに

 

 このごろ、政治資金収支報告が問題になることが多い。収支報告書は政治資金規正法に基づき毎年春に前年分が提出されている。08(平成20)年分は、昨年(09年)9月に総務省、都道府県が公表した。

 

 日本共産党の場合、総務省に提出した中央委員会所管分について、党本部サイトの「日本共産党の財政」で概要を説明している。この説明は95年分以来、毎年(97年分を除く)掲載されている。この党側説明内容については、当サイト主宰の宮地健一氏が、かねて批判的に論評されている。

 

    共産党『日本共産党08年政治資金報告』党員数隠蔽

    共産党『日本共産党の財政−政治資金収支報告』95年〜08年

 

 しかし、共産党の政治資金は、中央委員会所管分だけでは全体像が分からない。47都道府県委員会分と、314地区委員会分を合わせて見る必要がある。(その他に、各支部レベルの収支もあるはずだが、これは報告されていない)。府県委、地区委分は各都道府県の「公報」(「広報」ではない)に掲載され、ネットでも閲覧できる。しかし実は各サイトがそれぞれ独自スタイルで作られているため、データまでのアクセスがまちまちである。

 

 また、各党の報告書をそのままコピーしたのもあれば、各県独自に編集し直したのもあり、データ形式も色々、中には画面上で横倒しのもあり、全てを閲覧するのはまことに難儀である。まして、これを全国合算して一覧表としたデータはどこにも公表されていない。これは各政党同じである。共産党の場合、財務・業務局あたりが内部資料として作成しているのかもしれない。

 

 当稿は、共産党全組織の政治資金収支(08年分)を一覧表にして提供するのが目的である。細かい数表だけでは分かりにくいので、以下、ポイントを少し述べる。財務内容を批判するのでなく、あくまで客観的な紹介である。

 

(注)◇政治資金報告書は、全国的に統一された書式で提出されている。収支項目の正式名称も決まっているが、当稿では適宜省略している。

           ◇党本部サイトには地区委員会名が316挙げられている。このうち、長崎の五島群、対馬群両地区委は、連絡先が県委員会になっており、収支報告書も公表されていないので、314地区委について調査した。

          ◇数字の詳細一覧は、添付資料(Excel表)にある。当稿では、数字を適宜丸めている。従って合計が合わないことがある。また、一覧表にないが、収支報告書から直接引用してコメントしているデータもある。

 

          【添付資料目次】

            1 総括表

            表2 都道府県別合計一覧

            表3 都道府県委一覧

            表4 都道府県別地区委合計一覧

            表5 全国地区委別一覧

            表6 大口寄付者(中央委、県委)

            表7 大口寄付者(地区委)

            表8 主な資産

            表9 政治資金数表−EXCEL表、政治資金グラフ

 

 

 1、財政規模と「交付金」―全党で実質規模約400億円

 

 当稿では、政治資金報告書の収支項目に沿って、特徴を見ていく。まず、各級組織別の収支概括表(表1)を掲げる。

 

総括

 

収入

総額

前年

繰越

今年

収入

支出

総額

翌年

繰越

 

1収支概括表

 

中央委

272

22

249

250

22

◇単位億円。以下切捨。未満項目は小数点表示

都道府県委

150

14

136

133

17

◇地区委は134地区合計。

地区委

161

8

152

152

9

◇地区委の政治活動費の一部項目は一括集計

合計

584

46

538

535

49

◇党費の納入人数は延べ数、単位万人

収入

 

党費

(納入

人数)

寄付

機関

借入

交付

(内中央

から)

その

 

中央委

9

308

4

215

0.05

13

--

6

都道府県委

16

293

14

0.5

0.7

102

79

0.6

地区委

19

267

62

0.6

1

66

0

1

合計

45

869

82

216

1

183

79

8

支出

 

経常経費

政治活動費

小計

人件

その

小計

交付

(内中

央へ)

組織

活動

選挙

関係

機関

調査

研究

その

中央委

42

27

14

208

40

--

2

1

160

0.8

1

都道府県委

42

37

5

91

80

13

3

0.4

4

0.1

1

地区委

92

68

23

59

23

0

36

合計

176

132

43

358

145

13

210

 

 収入面では、共産党が常々表明しているとおり「機関紙事業収入」「党費」「寄付」(個人カンパ)が“三本柱”である。支出面については積極的に説明されることは少ないが、「機関紙事業費」「人件費」が大きい。これらの項目の他に、収支両面に「交付金」という項目があって、金額が大きい。他項目が主に外部(党員個人を含む)とのやりとりであるのに対して、「交付金」は、若干の例外を除いて、党内部での資金上下流通である。

 

    (注)収支報告書の項目としては、他に、収入面では「借入金」「その他収入」があり、5節で簡単に触れる。支出面では「事務所費」「組織活動費」「選挙関係費」などがあるが、金額が比較的少ないので当稿では触れず、添付資料に数字だけ挙げる。

 

 08年の総収入額(前年繰越含む)は、中央委員会分が約272億円、都道府県委員会分が約150億円、地区委員会分が約161億円あり、総計約584億円となる。

 

 ただ、財政規模を見る場合、上記「交付金」項目に注意する必要がある。当節では、これを収支両面から見ていく。ここでは、上部へ交付されるものを“上納金”、その逆を“下付金”と呼ぶことにする。具体例として中央委と北海道委/東京都委/大阪府委/沖縄県委の間で行われた年間分を下に挙げる。いずれも下付金のほうがかなり上回っている。全都道府県トータルでも同じである。

 

 (注)「交付金」という収支項目の他に、選挙関係費や機関紙事業費中にも「交付金」とう小項目があるが、ここでは含んでいない。

 

都道府県委員会

中央委

上納金

下付金

差引(下付)

◇北海道委   ←

◇東京都委   ←

◇大阪府委   ←

◇沖縄県委   ←

→中央委

→中央委

→中央委

→中央委

7169

19681

12807

1239

49868

96146

69636

6746

42699

76465

56832

15507

◆全都道府県委←

→中央委

136817

790975

654158

        (単位万円、以下切捨て)

 

 同様に、都道府県委と各地区委との間についても例示する。この場合も下付金が上納金より大幅に多い。

 

 (注)◇上納金の中には、地区委間での水平交付や支持団体などへの寄付が若干含まれていることがある。例中では東京足立区の場合「革新区政をつくる会」への寄付30万円が含まれている。当稿ではこれを区別していない。

       ◇中央委と地区委直接のやりとりはない。都道府県委が双方向に流通させている。

 

地区委員会

都道府県委員会

上納金

下付金

差引(下付)

◇北海道札幌北区委←

◇東京足立区委   ←

◇大阪木津川南委  ←

◇沖縄北部委     ←

→道委

→都委

→府委

→県委

494

1918

1173

47

1520

4461

3735

641

1026

2543

2562

594

◆全地区委      ←

→全都道府県委

234043

666807

432764

        (単位万円、以下切捨て)

 

 つまり、「交付金」は、上から下へ多く流れている。上納金、下付金とも毎月末付で計上されているが、どういう内規に基づいて金額が決められているのか、もちろん分からない。また単に帳簿上の処理なのか、実際、預貯金が動いているのかも分からない。

 

2 財務規模(08年収入総額=単位億円)

 

形式的

実質的

中央委

272

46.6

258

64.3

47都道府県委

150

25.7

47

11.7

314地区委

161

27.6

95

23.7

合計

584

100

401

100

 

 

 

 

 

 

 

 いずれにしても、「交付金」は党内各組織から見ると金の出入りではあるが、党全体として見ると、あくまで内部的な流通に過ぎない。従って、外部(党員個人を含む)から集めた金という意味で党全体の財務規模を見るには、この部分を差し引いたほうが、実態に近いと言えるだろう。実質総収入は約183億円縮小して、約401億円となる。この実質収入では、中央委分が際立つが、これは機関紙収入のウエートが高いためである(表2)。機関紙収支は、次節で述べる。

 

 

 2、機関紙事業の収支―『赤旗』の“粗利益”は約60億円

 

 次に党収入“三本柱”を順次見ていく。まず当節で「機関紙など事業」を取り上げる。この場合、支出面にも同じ項目があるので、収支合わせて見るほうが適切である。また、都道府県委、各地区委にも同じ収支項目があるが、金額が桁違いに少ないので、中央委分に限って見る。すなわち、大まかには“『赤旗』収支”と言ってよいだろう。

 

 中央委分の報告は、総額約215億円である。党サイト説明は総額だけだが、報告書では内訳を次のとおり示している。

 

◇新聞

214億6923万円

◇書籍

8684万円

◇記念品など

238万円

 

 新聞が圧倒的金額である。『赤旗』本紙、日曜版の内訳や部数は示していない(法規でもそこまでは要求していない)。

 

 一方、事業費支出総額は約160億円であり、うち機関紙関係支出は約154億円である。新聞収入214億円と見比べてみると、『赤旗』発行で約60億円の“粗利益”があったといえよう。この“粗利益”が、前述「交付金」(=下付金)の有力な源泉になっている。

 

3 機関紙事業費の支出(単位億円)

費目

(内容例)

08年

06年

増減

交付金

(都道府県委へ )

37.4

39.8

2.4

人件費

(給与・通勤費)

32.6

33.8

1.2

材料費

(用紙・材料代)

19.6

21.2

1.6

印刷費

(印刷・製本代)

34.7

37.0

2.3

運賃

(運賃・郵送代)

19.1

20.5

1.4

通信費

(送受信・電話代)

0.7

1.2

0.5

編集費

(旅費・資料代)

5.1

5.6

0.5

原稿料等

(原稿料)

1.1

1.2

0.1

営繕費

(管理費・家賃)

2.9

5.5

2.6

消耗品費

(電気・品代)

0.4

0.8

0.4

広告料

(広告料)

0.06

0.08

0.02

合計

当表

152.7

166.6

13.9

報告書

154.0

167.2

13.2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機関紙事業費の支出については、党サイト説明にはないが、報告書には詳細な内訳を示している(表3)。支出費目は、新聞の編集・製作・流通に必要なものとして、うなずける(一般新聞との比較資料は持ち合わせていない)。ただ、そのうち交付金は都道府県委への支出である(前節で取り上げた一般的な「交付金」とは別)。目的は戸別配達費などと思われる。なお、支出面ではこの中央機関紙分と、交付金支出(前述)を除いた項目が「一般支出」と言える。

 

 

 歴年比較をすると、長期趨勢が分かるはずだが、総務省サイトには、最近3年分しか搭載されていないので、06年分との比較を表にした。各費目とも08年は減額し、全体として約8%縮小している。

 

 

 3、党費―1人当たり金額は幾らなのか

 

 党費は、周知のように党規約で党員1人「実収入の1%」と定められている。集めた党費は中央委、都道府県委、地区委で配分されている。その配分比率などを定めた内規はあるのだろうが、公表されていない。支部への配分も分からない。

 

 政治資金収支報告書で公表された08年分の党費収入と納入者数は、次のとおり。

 

党機関

08年度党費収入

納入者数

◇中央委員会

9億1602万円

3,088,830人

47都道府県委員会

16億5824万円

2,933,247人

314地区委員会

19億6121万円

2,674,984人

◆合計(報告書に基づく

(45億3548万円)

 

 

 党費配分は下級ほど多額になっている。

 

 ここで注意が必要なのは、納入者数である。収支報告書の書式では「実人員」を記入するよう例示してあるが、共産党の報告は「延べ人員」である。(中央委報告書には「延べ」と明記してある)。おそらく月単位で、1年12カ月納めた場合は「12」、3カ月納入は「3」とカウントしているのだろう。従って、上記数字から正確な実人員は割り出せない。

 

 また金額の各級配分に伴って、人数はダブルカウントされているはずなので、単純な足し算もできない。もう一つの注意点は、上級組織ほど納入者数が多くなっていることである。上級組織直属の支部や党員がいるためだろう。

 

        (注)納入者数は桁数から推察して、各委員会とも延べ数を報告していると見られる。しかし何故か、福岡県委と同県内14地区委員会だけは実人員と思われる。当資料ではそのまま引用してある。

 

 上記のような理由で、納入人数と1人当たり党費額は正確には分からない。あくまで仮定であるが、次のように試算してみる。

 

◇党費年間総額

55億円

(報告書にはないが、支部に約20%、約10億円が留保されていると想定)

◇納入者実数

25万人

(中央委分308万人÷12カ月。宮地健一氏論考を参照)

◇1人年間党費

22,000円

(年間総額÷納入者実数)

◇1人年間実収入

220万円

(規約「党費は実収入の1%」から逆算)

 

 年間実収入約220万円という数字が、現在の党員収入レベルと合っているのかどうかは分からない。平均年収はもっと高いはず、と考えるならば、その食い違いの原因は、実収入を実態より少なく判定して運用しているか、それとも納入者実数が仮定より少ないか、いずれかではなかろうか。他に、表に出ない党費、すなわち支部にもっと多額が留保されているとの推定もできるが、ちょっと無理な気がする。

 

 都道府県委、地区委別の党費配分額、納入人数の上位10を、表4に掲げる。

 

表4 党費配分と納入人数の多い組織

 

党費配分額(万円)

党費納入人数(延べ人数)

県委

金額

地区委

金額

県委

人数

地区委

人数

1

東京

27,124

(東京)千代田

2,692

東京

405,968

(大阪)堺泉北

26,671

2

大阪

16,265

(大阪)堺泉北

2,150

大阪

302,926

(埼玉)さいたま

23,704

3

愛知

12,240

(神奈川)横浜西北

1,951

北海道

206,077

(東京)足立

21,673

4

京都

10,011

(神奈川)北部

1,917

京都

185,897

(神奈川)横浜北東

21,490

5

北海道

8,790

(東京)大田

1,836

愛知

151,535

(新潟)新潟

20,943

6

神奈川

8,201

(京都)北

1,820

神奈川

147,249

(岡山)岡山

20,621

7

埼玉

7,492

(埼玉)さいたま

1,702

埼玉

136,698

(大阪)河南

20,552

8

兵庫

6,301

(東京)板橋

1,490

兵庫

119,664

(大阪)北河内南

20,329

9

福岡

51,82

(香川)東部

1,478

千葉

93,496

(大阪)木津川南

19,380

10

千葉

4,896

(東京)足立

1,431

長野

78,528

(神奈川)横浜西南

18,528

 

 

 4、寄付−党費の1.8倍。1000万円以上の人も

 

 寄付はいわゆるカンパである。共産党が常々述べているように、主体は個人カンパである(例外的に関連団体からのものが計上されていることがある)。各組織別の年間総額は次のとおり。

 

◇中央委員会

4億8859万円

47都道府県委員会

14億9717万円

314地区委員会

62億7559万円

◆合計(報告書に基づく)

82億 6135万円

 

表5 大口寄付の例(単位円)

寄付先

氏名

金額

住所

職業

中央委

相澤孝子

2,128,011

練馬区

議員秘書

赤嶺政賢

3,441,260

那覇市

国会議員

朝日健二

1,022,000

清瀬市

無職

市田忠義

4,837,000

江東区

国会議員

上田均

1,246,000

印西市

政党役員

志位和夫

5,187,333

船橋市

国会議員

東京都委

榎本武光

1,040,000

市川市

弁護士

大山とも子

2,535,652

新宿区

議員

可知佳代子

2,513,161

大田区

議員

河野百合恵

2,447,639

江戸川区

議員

小竹紘子

2,440,339

文京区

議員

清水秀子

2,462,750

八王子市

議員

千葉

市川浦安地区委

井原めぐみ

1,522,679

浦安市

市議

元木美奈子

1,333,677

浦安市

市議

美勢麻里

1,288,550

浦安市

市議

松尾禮子

1,150,000

市川市

自営業

金子貞作

1,907,904

市川市

市議

谷藤利子

2,023,627

市川市

市議

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 党費の約1.8倍の多額である。党費と同じく下級組織ほど厚く、特に地区委が中心である。党費と違って、各級配分ではなく、受け取った組織ごとに報告されているようである。支部への寄付は分からない。党費と違って納入者人数は報告が義務付けられていないので、人数は分からない。氏名を数えるのは面倒だし、5万円以下は氏名も非公表である。

 

 さて、どういう人が寄付しているのか。当稿では年間100万円以上の大口寄付者約1100人全員の氏名を各組織別に書き出した(添付資料参照)。報告書様式では寄付者の職業を記入することになっているが、各自治体サイトで公表するさい、この部分を削除している所がほとんどである(共産党分に限らない)。しかし、公表している一部サイトのを見ると、大口寄付者の中には、議員、議員秘書、政党役員が多いことが分かる(表5)。これから推察すると、職業が大方伏せられている地区委員会への寄付中には、地方議員からのものが多いと思われる。

 

 なお、政党への個人献金は規正法によって1人年間2000万円以内と制限されている。共産党関係も当然その範囲に収まっており、国会議員クラスで400万円前後である。しかし、中央、地方を通じて1000万円以上の寄付者が11人ある。その中に約2500万円が2人あり、これは制限のない遺贈である。大口寄付は合計約22億円に上る。特に中央委の場合、寄付総額4.8億円のうち、半分以上の2.8億円が大口である。

 

百万円以下の小口寄付は、例を表6に示す。

 

6 小口寄付の例(単位円)

寄付先

氏名

金額

住所

職業

備考

中央委

上田耕一郎

46,800

相模原市

政党役員

元副委員長、08/10死去

上田建二郎

165,000

国立市

政党役員

不破哲三氏の本名

吉川春子

156,000

文京区

政党役員

元参議院議員

大阪府委

宮本岳志

55,600

岸和田市

 

09衆院選比例区当選

 

 

 5、借入金、その他収入−国会議員団1.2億円納入

 

 収入項目としては、上記“三本柱”以外に「借入金」と「その他収入」がある。いずれもウエートは、比較的小さい。

 

7 「その他収入」の例(中央委分、単位万円)

食堂利用料

5,751

 

受取利息

1,432

みずほ銀行など

貸付金戻り

26,404

あかつき印刷などから

不動産売却

14,844

潟Iメガなど

国会活動協力受託費

12,000

国会議員団から

合計(報告書合計)

62,464

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 借入金は、中央委は510万円、都道府県委で最も多いのは大阪府委の2200万円、地区委では京都左京地区委の1485万円である。いずれも個人から10万円〜500万円ほど借り入れている。

 

 「その他収入」は、地方組織では少額だが、中央委の場合、約6億円にのぼる。主な内容は表7のとおり。国会議員団から1億2000万円受け取っているが、「国会活動協力受託費」という名目が、ちょっと微笑ましい。

 

 以上、収入面の各項目を概観した。改めて大まかな数字(実質収入)を列挙しておく。

 

◇機関紙事業(中央分“粗利益”)

60億円

◇党費

45億円

◇寄付

82億円

◇その他(借入金、繰越金除く)

8億円

◆計

196億円

 

 

 6、人件費−“実質収入に対する比率は60%以上

 

 支出項目は「経常経費」と「政治活動費」に大別して報告されている。経常経費は全組織合計で約176億円、政治活動費は約358億円である(表8)。経常経費の中では「人件費」、政治活動費の中では「交付金」「機関紙費」が大きい。交付金、機関紙費についてはすでに触れたので、ここでは人件費について述べる(表8参照)。

 

 人件費は全組織合計で約133億円である。金額は下位組織ほど多い。支出総額約535億円に対し、約24.8%である。しかし支出総額には、既述のとおり交付金、機関紙費(中央分)という特殊な項目が含まれている。収入面でも同じである。そこで、前節で集約した“実質収入”約196億円と比べて見ると、67.8%に上る。つまり、実質収入のおよそ3分の2は人件費と言えるだろう。

 

 (注)◇中央機関紙関係の人件費は、既述のとおり機関紙費の中に約33億円入っているので、当節の数字には含んでいない。この33億円を収入、支出両面で“実質”と見做すと、人件費率は一層高くなる。

 ◇熊本県下の4地区委は何故か人件費の報告がない。

 

8 支出の内訳(単位万円)  (支出総額約535億円)

 

支出総額

経常経費

政治活動費

 

 

小計

人件費

その他

小計

交付金

組織

選挙

機関紙

調査

その他

中央

2,500,874

420,654

274,628

146,026

2,080,220

407,671

26,625

14,184

1,606,777

8,696

16,264

府県

1,336,970

426,013

370,611

55,401

910,956

809,362

38,614

4、077

46,562

1,983

10,355

地区

1,520,461

921,794

683,789

238,004

598,667

234,043

364,623

合計

5,358,306

1,768,462

1,329,030

439,432

3,589,843

1,451,077

2、138、765

 

 さて、この人件費は誰に対して支払われているのかは、報告されていない。常識的には党専従者に対してであろう。宮地健一氏はしばしば、専従者数を約4000人とされている。それが正確かどうかは筆者には分からないが、単純に割り算すると、平均年収は約133億円÷4000人=約333万円 となる。なお、4000人のうちにもし、中央機関紙関係者を含んでいるとすれば、人件費総額は機関紙分約33億円を加える必要があるので、平均年収は約415万円となる。

 

 

 7、資産−広い土地、国債や墓地

 

 政治資金報告書には、収支年間のほかに、保有する「資産」も記載されている。内容は、土地、建物、動産、預貯金・有価証券などに分かれている。

 

 不動産については、所在地、取得価格、面積が表示されている。一口にいうと、中央、地方を通じて相当多くの物件を保有している。当稿では、中央委、都道府県委、地区委(東京、大阪だけ)所有の土地、建物について取得価格1000万円以上の物件を書き出した。取得価格は時期が古いものは、現在の評価額と合わないと思われるので、中央委保有の土地だけは、面積1000u以上も取り上げた。目についた例を表9に挙げる。

 

9 主な不動産

所有者

区分

所在地

取得額(万円)

取得年

面積(u)

中央委

土地

熱海市上多賀白子1136

20

S36

43,073

熱海市上多賀白子1137

62

S41

1,870

伊東市吉田字沢向992

3

S41

4,706

八丈島八丈町三根848

1,213

S47

3,713

指宿市東方字永田尻8849

20

S47

5,454

渋谷区千駄ヶ谷5

23,831

S50

534

渋谷区千駄ヶ谷5

28,560

S57

161

渋谷区千駄ヶ谷4

32,240

S59

130

渋谷区千駄ヶ谷4

11,800

H16

69

伊東市赤沢字浮山I168

10,390

H5

2,317

世田谷区等々力8

5,515

H7

95

世田谷区等々力8

21,118

H7

337

世田谷区等々力8

11,835

H7

261

さいたま市北区吉野町2

10,830

H12

1,984

建物

渋谷区千駄ヶ谷4

910,155

H18

16185

神奈川県津久井町青根字駒入原1274

1,090

S61

162

栃木県委

土地

宇都宮市

27,500

H18

369

埼玉県委

さいたま市

12,440

H14

612

滋賀県委

大津市

13,500

H5

731

奈良県委

奈良市

19,655

H2

1044

福岡県委

福岡市中央区

10,900

S63

196

中央委合計

土地

(報告書記載分全部)

218,579

 

 

建物

(報告書記載分全部)

1,079,748

 

 

 

 動産については、当稿では取り上げない。預貯金・有価証券その他については、中央委分で表10のとおり。ここでも国会議員団からの借入金が1億5000万円残っている。

 

10 主な金融資産など(単位万円)

項目

金額

備考

預貯金

151,321

みずほ銀、三菱UFJ銀など

利付国債

46,800

H17年の10年もの、H20年の20年もの

貸付金

113,145

あかつき印刷、新日本出版

敷金

87,000

墓地永代使用料

1,800

八王子上川霊園

借入金

100,463

国会議員団から15,000。他は個人137人から最高5,500

 

 

 8、地域別の財務指標と党勢相関関係はある

 

 常識的に考えて、党勢の強い所は党費や寄付が集まり易いだろう。逆に、集まるから強い、とも言えよう。そういう相関関係が実際あるか。政治資金報告の数字を、都道府県単位(府県委+管内全地区委)でまとめて、ある種の比率や順位を出してみた。結論的にいうと、財務指標と選挙成績(09衆院選比例区得票率)とは、かなり強い相関性が見られる。特に、京都は指標総合順位で1位である。“必勝区”と位置付けられただけのことはある。

 

 【総合順位上位10】

 1.京都 2.東京 3.高知 4.大阪 5.滋賀 6.長野 7.和歌山 (8)福岡 9.北海道 10.愛知 11.埼玉

 

     (注)福岡は党費納入人数を「延べ」でなく実数で届けているため、指標に異常値があり、8位は正確でない。

 

 各指標別の順位は表11に示す。表中の数字自体に正確な意味はない。あくまで順位付けのための指標である。詳細は添付表を参照していただきたい。

 

11 財務・党勢各指標の上位10

 

党費/納入人数

納入人数/人口

党費/人口

寄付/人口

09衆院選比例区

順位

府県名

金額

府県名

人数

府県名

金額

府県名

金額

府県名

得票率

1

東京

804

京都

0.136

京都

88.3

京都

193.0

京都

13.95

2

愛知

784

高知

0.081

高知

51.7

大阪

100.1

高知

11.74

3

栃木

726

北海道

0.072

東京

47.6

東京

96.8

大阪

10.10

4

三重

706

長野

0.070

和歌山

40.8

長野

96.4

東京

9.61

5

神奈川

698

和歌山

0.068

大阪

40.1

高知

90.3

長野

9.42

6

富山

694

大阪

0.066

滋賀

38.1

北海道

89.6

福井

9.42

7

広島

688

東京

0.059

愛知

30.0

和歌山

88.4

滋賀

8.84

8

埼玉

671

香川

0.059

長野

39.1

滋賀

67.8

沖縄

8.00

9

福井

663

滋賀

0.058

北海道

35.5

埼玉

61.3

埼玉

7.99

10

滋賀

657

岩手

0.058

岩手

31.7

福岡

60.2

兵庫

7.79

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      (注)◇党費と納入人数は、各都道府県委+管内全地区委分。納入人数は延べ数で、県委と地区委でダブル勘定になっている。

人口は2008年、政府統計データe-Statから。

         ◇党費/納入人数は1人→1カ月党費額(円)を意味するが、人数がダブル勘定になっているので、厳密ではない。あくまで順位付けのメドである。

         ◇納入人数/人口、党費/人口、寄付/人口の数字も同様、順位付けのための指標である。

 

 

 9、政治資金数表−EXCEL表、政治資金グラフ

 

 この数表は膨大なので、その目次のみ転載で、リンクにした。

 

 表1 総括表−政治資金報告書の収支項目別に中央委、各都道府県委、各県地区委合計の一覧

 表2 都道府県別合計−各都道府県委員会と管内全地区委の合計一覧

 表3 都道府県委員会−都道府県委員会別の一覧

 表4 地区委員会合計−各都道府県別の地区委合計一覧

 表5 各地区委員会詳細−全国314地区委員会別の収支一覧

 表6 大口寄付者T-年間百万円以上の大口寄付者名(中央委84人、都道府県256、計340)

 表7 大口寄付者U- 〃(地区委761人)

 表8 主な資産−主な不動産、金融資産などの保有状況

 表9 財務・党勢指標−財務諸指標と選挙成績

 

      (注)◇いずれも相当大きいサイズである。例えば「表1総括表」は約40%に縮小しても、A3横に一杯となる。

           ◇特異な数字の場合、欄外(右端)に注釈をつけていることがある。

 

    MF生作成『日本共産党の政治資金数表−excel表1〜9

           『日本共産党の政治資金グラフ』

 

 

 おわりに

 

 当稿では大方は08年分だけについて観察した。各行政サイトでは過去3年分は搭載されているが、それより古いものは例外的に搭載されているだけである。単年度であれ、経年変化であれ、個人でフォローするのは労力的に困難である。

 

 機関紙や党サイトで、中央委財務の一部分だけ説明するのではなく、党財務の全体像を示せないのだろうか。他党には全国掌握などできなくても、組織規律の強い共産党ならできるだろう。各委員会で収支報告書を行政当局に提出して公表されている以上、それを一まとめにして公表することを、ためらう真っ当な理由はないのではなかろうか。機関紙購読や、党費・カンパを拠出している党内外の人に応える意味でも、そうするのがフェアだと思う。

 

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 〔関連ファイル〕

     『日本共産党08年度政治資金報告の表裏』

     『じり貧的瓦解第4段階−赤旗新聞社経営破綻・選挙財政破綻』

     総務省『日本共産党08年政治資金報告書』 党員数報告

     共産党『日本共産党08年政治資金報告』 党員数隠蔽

     共産党『日本共産党の財政−政治資金収支報告』95年〜08年

     MF生作成表『総選挙小選挙区−共産党の成績』小選挙区結果沈黙・隠蔽