よもやま話し
第2弾
圧力鍋のすすめ

 圧力鍋は恐い。という話はよく聞く。

 こちらは圧力鍋のある生活が続いて幾星霜、なので、そう?としか反応できない。 まあ、しかし想像力を働かせてみれば、
 ・・・外見が威圧的だ。普通の鍋には付いていない圧力調整ピンだの重りだの、 訳の分からないものが一杯付いてる。・・・いかにも危険なもののように、 安全マークなんぞ貼って売られている。・・・扱いが面倒そうに見える。 ・・・火にかけて圧力がかかった瞬間に、シューッと雄叫びを上げて人を驚かす。

 成る程なるほど。でも、慣れちゃえばどーってことないけど?

 爆発した? 実際に爆発させたという人に合ったことがないけど、 本当にそんなことあるの? 本当なら、使用上の説明に反するような使い方をしたか、 でなきゃ、不幸にして信用のおけないメーカーの製品を使ったか、どちらかだ。

 圧力鍋を使うと、火が通りすぎて野菜の繊維がなくなり、歯ごたえのない まずい煮物が出来る。大根なんてくたくたになっちゃって。
 昔、同僚がそう息巻いていたけど、それは圧力鍋のせいじゃないでしょう。 悪いけど奥さん、味音痴じゃない?素材に合わせて火を通す時間を加減すれば、 そーゆーことはないと思うけどねえ。(むしろ、そういう文句言う前に自分で料理作れ!)

 うちの母は、圧力鍋使い続けてすでに15年、はっきり言って名手である。 ふっくら煮上がった黒豆なんて、飛騨高山の料亭角正(かくしょう)に迫るものがある、 というのがうちの家族一同の意見。ちゃんと丹波の黒大豆を使うのだよ、勿論。
 突然なんで角正かって、和食の最高峰は角正、てのがうちの基準なのよ。 うちの両親は、まだ生まれて間もないこのミミズを抱いて角正に行き、 美しい庭をのぞむ風雅な座敷でおむつを代えたという強者である。 それから20年以上たって、成長しきった娘3人を連れて再訪を果たした両親の感慨は、 さぞかし深かったことでありましょう。

 んなことはどうでもよろしい。圧力鍋だった。生憎とミミズはそこまで圧力鍋を 究めてはいないけれど、圧力鍋無しの生活なんて考えられない。今、2つ持ってるけど、 もう1個欲しいくらい。
 何しろ早い!ご飯を焚く。火にかけてシューッと言ったら5分、火を止めて 蒸らし時間10分、以上お終い。ジャガ芋を丸ごと(茹でるのではなく)蒸すと、 蒸し器でどの位かかるか知らないけれど、圧力鍋ならシューッと言ってから15分、 蒸らし時間なし。(小さめのジャガ芋の場合。)
 シチューでもカレーでもゆで豚でもポークビーンズでも、実に早く出来る。 残業して帰ってきても、ミミズや小ミミズ(妹)が夕飯を作る気になれるのは、 一重に圧力鍋があるから。

 あ、それでね。圧力鍋と言えばラゴスティーナ。これは覚えておくように。 母とミミズとで、国産のを何種類か使ってみたけれど、イタリアはラゴスティーナ社の 製品に優るものは無かったのである。大体、鍋のくせに10年保証。 これは凄い自信の現れと言うもの。

 錆びたり塗料がはげたりしないステンレス製、すっきりしたフォルム。圧力がしっかり かかる(つまり調理時間がより短くなる)構造。当然、安全設計。

 とにかく、頑丈。恐い話をしてあげよう。ミミズは空焚きをしてラゴスティーナ1個 駄目にしてるんだけど、これ別に壊れた訳じゃなくてね。
 作り置きしておいたシチューに火を通しておこうと思って、換え蓋をのっけて、 弱火で加熱したと思いねえ。恐ろしいことに、そのまま忘れて外出してしまったのだよ。 10時間ほどたって、帰宅の途上、突然「あ、ガス」と思い出したのだから 本当に間抜けで恐すぎる話し。
 真っ青になって家に辿り着くと、家の(というより団地の)外見に特に変わった ところはなく、でも、実は中で燃えてるかも知れないから、フラッシュバックに 気を付けてそおぉっとドアを開けると(苦笑)、やはり火は見えず、 ガス代も鍋もすっかり冷え切っている。シチューは鍋の中で完璧に炭化しており、 ガスは過熱防止装置が働いて止まっていた次第。
 あああ良かった。何度思い出しても恐いよー(TT)

 こういう過酷な目に合っても、鍋の形状にはなんら変化がなかった。なんて丈夫な奴! ただ、酷い匂いがこびりついてしまったので、泣く泣く捨てて2代目を購入した訳。 (部屋にも炭と化したシチューの怨念、じゃなくて臭気が充満し、10日ばかり 抜けなかった。)

 他にも、軽い失敗ならいくらでも。鍋の側面に喫水線みたいのが刻んであって それ以上材料を入れては行けないのだけど、うっかり野菜から上がってくる水分を 計算しないでたっぷり詰め込んじゃったら...。シューッと言う代わりに、 圧力を逃がす穴からピューッと液体が噴出して、火を止めてもおさまらない。 あら、どうしましょどうしましょ、と暫く踊ってから気が付いて、たらいに水を張り お尻をぼっちゃんと浸けて、ようやく沈静(笑)。

 要は、目を離さない、ルールを守る、落ち着いて行動する。これなら、普通の鍋を 使っているときと同じことだもの、別に恐くないって。(いや、空焚きの話しはこわいけど! でも、圧力鍋のせいでないのは、分かっていただけてますね?)
 料理好きの人なら絶対レパートリー広がるし、働く主婦はもう一品余計に作れるように なるし、ものぐさな人間でもレトルトや店屋物とおさらばするチャンス。 使ってみて欲しいんだけどなあ、圧力鍋。

 ほーら、恐くない恐くない恐くない....。

('98.5.16)   

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 ご存知 圧力鍋
 この文章が反響大きかったので始めた、圧力鍋ページです。

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