みんがらばあ!

乱読痛勤日記


2002年10月3日new!
森博嗣「赤緑黒白」(講談社ノベルス)読了。
瀬在丸紅子らが活躍する、いわゆる「Vシリーズ」の最新刊。いやはや、殺人の動機もここまできたか、という感じ。いや、待てよ、シリーズの原点に戻ったと言うべきなのか?ま、例によっておもしろいことには違いない。
次は何が飛び出すのやら。もしかすると、彼と彼女とさらには「あの人物」がついに共演するのでは、という期待も抱いてしまうようなラストである。

2002年4月1日
富樫倫太郎「陰陽寮(六)平安地獄篇」(トクマ・ノベルズ)読了。
そろそろ(次巻あたり?)佳境に入るか陰陽寮。まだまだ続くのがわかっていても面白いのは何故だろう。
この「富樫ワールド」の安倍晴明は、他の誰の書く晴明よりも強烈で妖しい存在である。晴明だけでなく、今昔物語集などにちょっとずつ登場するような人々も、作者によって新しい魂を吹き込まれて生き生きと活動している。
また、藤原道長が、私たちが学校の授業で教わった「天皇との外戚関係を利用して政治を私物化した人物」という、皇国史観をベースに歴史教科書に記載されたと思われる一面だけを採りあげた描かれ方をしていないのも良い。教科書では少ししか触れられていない「刀伊の入冦」は実は大事件だったのである。

2002年3月19日
小野不由美「屍鬼」(新潮文庫)読了。
重い、重い。文庫ではなく、本当に重そうなハードカバーで読むべきだったかも。単なるホラーでは片付けられない作品。
ネタばらしになるので多くは書けないが、主人公たちのような状況に陥った時、私たちはいったいどんな行動をとるのだろうか?

2002年2月12日
藤田紘一郎「サナダから愛をこめて 信じられない『海外病』のエトセトラ」(講談社文庫)読了。
知る人ぞ知る、サナダ虫の先生あるいは日本一の回虫博士の著作である。
感染経路別に分類した感染症や地域別の主な病気と潜伏期の表などが付いており、海外旅行必携の書。それと同時に、世界一の無菌国家に住み、どんどん弱くなっていく日本人に対する警鐘でもある。

2002年2月2日
クイーン兄弟「Killer X」(カッパ・ノベルス)読了。
や、やられた……。こんな結末が用意されていようとは……。
ところでこの作品、著明な推理作家二人の合作とのこと。例によって作者宛クイズがついている。一昨年の「白銀荘の殺人鬼」の登場人物と同一と思われるキャラクターの存在や、主人公(?)が親指シフトキーボードを愛用しているところから、前作と同じ作者かとも考えれるが「ひっかけ」の可能性もあるので何とも言えない(しかし親指シフトキーボード愛用の某作家のホームページでもこの作品が紹介されていたから、素直にいってもいいのかも……)。

2002年1月30日
折原一「失踪者」(文春文庫)読了。
いあや、またまた騙されてしまった。だから折原作品はやめられない。
錯綜する過去と現在。複数存在する「少年A」。それぞれの思惑によるそれぞれの調査の結末はある1点に集約されて、真相が明らかになる。今回は終盤になってある主要登場人物の正体がわかったのでいい気になっていたら、後で強烈なパンチを2〜3発たてつづけに食らわされてしまった。

2002年1月23日
安部龍太郎「関ヶ原連判状」(新潮文庫)読了。
面白い!恥ずかしながら氏の著作を1巻通して読んだのはこれが初めて。
日本経済新聞の夕刊に連載しておられた「信長燃ゆ」を、勤務時間中に記事のチェックをするふりをしてコソコソ読んで以来、いつか読みたいと思っていた作家である。また、かの隆慶一郎が死の直前に会いたがった作家としても知られている。
さて本書であるが、天下分け目の関ヶ原合戦において、その局地戦のひとつとしてしか語られてこなかった細川幽斎の田辺城籠城戦に全く別の角度から光を当てて、活き活きと描いている。ここで多くを語るとネタばらしになってしまうので避けるが、要するに関ヶ原前後の混乱に乗じて天下を狙ったのは家康と三成だけではなかったのだ。

2002年1月11日
森博嗣「女王の百年密室」(幻冬舎ノベルス)読了。
舞台は今からおよそ100年後の、そこから100年前の最新テクノロジーで作られた、周囲と隔絶された街。読者は、そこで主人公が直面する謎に加え、主人公自身の謎にも取り組まなければならない。これら特種な設定のせいか、最初はとっつきにくい感もあったが、読み進むにつれて引き込まれ、最後は驚きと納得と。この特殊な設定は、このミステリを成立させるためには絶対必要な条件だったのだ。さすがである。

2002年1月2日
殊能将之「鏡の中は日曜日」(講談社ノベルス)読了。
素晴らしい!今年の初めにこのミステリを読めたことに感謝したい。前作「黒い仏」が気に入らなかったため、期待半分、不安半分、迷いに迷って購入しただけに、喜びもひとしおである。
お読みいただければわかるが、三章仕立てのこの作品、第一章のタイトルも「鏡の中は日曜日」である。読了して初めてわかったのだが、極端な言い方をすれば、第二章、第三章はすべてこの第一章に包含されている。勘の良い人なら、第一章を読んだだけで真相を看破できる……わけないか。


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最終更新日:2002年10月 3日(v1.08)