鳥は鳥に 〜Camomile Milk Tea〜 / page5


「確かに、届いたよ。ありがとう。」 その、思わずこぼれた僕の言葉に、応えるように。 すう、と、音もなく、何処からか白い影が夜天へと舞い上がった。 視界を横切った翼に気づいて、僕はすぐ呼びかけたけど、すでに遅かった。 もう、鳥は雪のように白い翼を広げて、舞い降りる雪の中、夜天の高みを駆けてゆく。 ひとりで、やがて来る春を迎えるために。 僕は、少しだけ微笑んで、白い花にうたれながら夜を駆ける鳥を見送った。 僕が逢ったあの娘だったのか、娘に繋がる子供だったのかは、わからないけど。 白い翼が見えなくなってから、僕はもう一度、目の前に降り続ける白い花を眺めた。 迎えるように橙色に燈る人の灯りは、まだ微かに僕の胸を温める。 その温かさに、微かな淋しさを覚えながら、『旅人』の僕は、鳥と人のことを、想う。 鳥には鳥の、人には人の、祈りや願いが込められた、永い冬至の夜。 その鳥と人を隔てる『海』の中に立ちながら、僕は僕の祈りを、静かな夜へと込める。 いつの日か、みんな、ひとつになれるように、と。                                    Fin.

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