「確かに、届いたよ。ありがとう。」
その、思わずこぼれた僕の言葉に、応えるように。
すう、と、音もなく、何処からか白い影が夜天へと舞い上がった。
視界を横切った翼に気づいて、僕はすぐ呼びかけたけど、すでに遅かった。
もう、鳥は雪のように白い翼を広げて、舞い降りる雪の中、夜天の高みを駆けてゆく。
ひとりで、やがて来る春を迎えるために。
僕は、少しだけ微笑んで、白い花にうたれながら夜を駆ける鳥を見送った。
僕が逢ったあの娘だったのか、娘に繋がる子供だったのかは、わからないけど。
白い翼が見えなくなってから、僕はもう一度、目の前に降り続ける白い花を眺めた。
迎えるように橙色に燈る人の灯りは、まだ微かに僕の胸を温める。
その温かさに、微かな淋しさを覚えながら、『旅人』の僕は、鳥と人のことを、想う。
鳥には鳥の、人には人の、祈りや願いが込められた、永い冬至の夜。
その鳥と人を隔てる『海』の中に立ちながら、僕は僕の祈りを、静かな夜へと込める。
いつの日か、みんな、ひとつになれるように、と。
Fin.
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