harvest rain
蛍石を含んで微かな青に色づいた、鉱物質の乾いた大地を揺らして、幾十ものエア・
キャラバンが駆けてゆく。
微かな青に覆われた移民星の大地の上で、新しい仮の宿りを、あるいは終の住処を求
めて旅を続ける、機械仕掛けの隊商。
そのとある一台の幌にもたれて、淡い眠りに就きながら、少年は夢を見ていた。
少年が幼い頃、旅のさなかで捨ててきた遠い土地での、記憶の欠片を。
−−この地が、僕が、君達を受けいれたら、僕は君に逢えなくなる。
背を向けて俯いたもうひとりの少年の胸から、ぽつりと生まれた言葉。
その言葉は、まるで雨の最初の水滴のようにぽつりとこぼれ、後から、後から、降り
注ぐ雨のように、胸の内から想いを溢れさせる。
−−だけど、僕は君に逢うことができなくなるのは、嫌なんだ!
−−でも、君が受け入れてくれなかったら、僕達はこの地から旅立つしか……。
夕暮時に巻き起こる、ほんの数刻で消え去ってしまう激しい雨のように不意に叩きつ
けられた言葉に、少年は戸惑いの言葉しか返せない。
少年のそんな戸惑いの言葉に、少し肩を震わせて、微かに鉱石のような青を含んだ髪
をさらりと揺らして、もうひとりの少年はゆっくりと振り向いた。
−−怖いんだ。君にも逢えずに、たったひとりで人をずっと育んでいけるのか……。
髪の色と同じ青を帯びた瞳に不安を映して、ぽつりとその少年は呟いた。
自らの選択によっては、その小さな肩に背負うことになる、重い責任を目の前にして。
その瞳に、未だ戸惑いのなかにいた幼い少年は、何も応えてやることはできなかった。
互いの瞳を見つめあったまま流れた数瞬の沈黙、それが青い髪の少年に、もうひとつ
の選択を決意させた。
−−受け入れなければ、いつかまた君に逢えるかもしれない、だから。
きっとそれは、何も言葉を返してやることができなかったから。
−−だから僕は、人をこの地に受け入れない。人を潤す雨を、この空に呼ばない。
***
|