その夢の中では、群れからはぐれた鳥のように、ただひとり、銀色の翼で夜空を駆けていた。 地上を覆うように、低い空に幾重にも積もった、淡い霧のような灰色の粒子の層。 高く、高く駆けあがってその霧の層を突き抜けると、灰青色だった視界が、深い藍色にひらけた。 藍色の空の高みまで昇っても、塵のようにちらちらと舞う粒子が一面にひろがっていて、星の灯火は見えない。 だけど、ぼんやりとした薄い衣をまとって、細く剣のように尖った月が、浮かんでいる。 その淡い黄色い光を見つけて、ようやく心がほっとする。 そう、わたしは、ずっと前から、月が好きだった。 夢を見ながら、娘はぼんやりと、想う。 眼下には、まるで雲の海のように一面の灰色が広がっていて、地上の灯を臨むことはできない。 その灰色の層の高み、ここ藍色の空には、銀色の『機械』で空を駆ける自分と、細い月の、ふたりきり。 遠く、世界の果てまで続いている空を、ただひとり、泳ぐように駆ける。 |
Ivory Towerの八坂 紗夜 様から頂きました。月の写真は、男衾村-復興計画 様よりお借りしています。 ありがとうございます〜! うちのお店の宝物にさせて頂きますね。 頂いた絵を開いた瞬間、絵の綺麗さに、嬉しくてオーナー舞い上がっておりましたです(笑) 何だか、本当に『るな』や『翼』の見た夢の光景、みたいで……。 『そら とぶ ゆめ』は書きあぐねに書きあぐねた挙句に、最後は一気に仕上げたおはなしで、 何とか完結して気力抜けしながら、一体読まれた方はどう感じるのだろう……と想っていた矢先だったので、 本当に嬉しかったです。ありがとう、ございました。
そのまま、ずっと見上げながら歩いていたりして(危ないって(笑)) もしも空を飛べるなら、蒼く澄んだ真昼の空も良いけど、 やっぱり月明かりのもとを飛んでみたいなぁと、想います。
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