Psi-trailing
***** Voice Recorder − 3 *****
「ステイションまでのコントロール、引き受けます。ミッション完了、お疲れ様です。」
「……街じゃちっとも見えないのに、飛んでいると、眩しいくらい明るく見えるのね。」
「何のこと、ですか?」
「月を見てたの。……ねえ『翼』、『渡り鳥』って知ってる?」
「『鳥』とは、私の名前の『翼』を持つ昔の生物のこと、ですか?」
「『渡り鳥』ってね、月や小さな星を道標にして、知らない世界まで飛ぶんだって。」
「……わたしね、戦いたくてとか飛びたくてとかで、飛空兵になったわけじゃないんだ。」
「じゃあ、どうしてです、マスター?」
「月が見たかったから。だから、『渡り鳥』と一緒で、月という道標があるから、ずっ
と飛べるのかもしれない。」
「笑わないで聴いてくれる? わたし、いつか、あの月まで飛んでいきたい。」
「……もしも本当に月まで飛ぶなら、その時は私もお供させてくださいね、マスター。」
「冗談よ、『翼』。……あなたがパートナーで本当によかった。」
「ねえ、ステイションまで、わたしが飛ばしていい? せっかく、月が綺麗だし。」
「……やっぱりわたし、空を飛ぶこと、好きなのかもしれない。」
「コントロールモード、フルマニュアルへ移行。今は月まで行かないでくださいね。」
「ありがとう、『休まない翼』。ずっと、飛ぼうね。」
*** End of Voice Recorder − 3 ***
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