「そんなの逆よ! ずっとミチルが私のおつきさまだったじゃない!」
最後のミチルの言葉が、まるで鍵となって私の心の箱を開けたかの様に、想いがあふ
れ出て。
一度あふれてしまうと、もう止まらなくて、私は叫び続けました。
「いつも綺麗で強くて、ずっと私のこと優しく照らして、引っ張ってくれた。ミチルと
いうおつきさまがいたから、私は暗い道でも歩いてこれたんじゃない!」
私がぶつけた想いに一瞬驚いたような表情をして。
そうしてミチルは真剣な色を帯びた深い黒の瞳で、静かに私を見つめました。
「それは違うよ、ちーちゃん。いつも不安定なわたしの足元を、ちーちゃんが落ち着い
てちゃんと照らしてくれたから、わたしは歩いてこれたんだもん。」
「違わないよ! ミチルは私の、大切なおつきさまなんだからっ!」
ミチルの思いもかけない返事を聴いても、私の中からあふれだす想いは止まらなくて。
私は、ぎゅいとミチルにしがみついて、顔を彼女の肩にうずめました。
そんな私の頭を、そっか、とつぶやいて、ミチルはずっと撫でていて、くれて。
月読草のやわらかな明かりとミチルの手が優しくて、そのまま、私は幼子のように泣
きじゃくってしまいました。
「ちーちゃん、おつきさまから故郷の星を見ると、どんな風に見えるかって知ってる?」
すこしだけ落ち着いた私の気配を感じたのか、ミチルはふとこんなことを訊ねました。
「やっぱり満ち欠けして、おつきさまの周囲を優しく照らして見えたの。そして、見る
人はほとんどいなかったけど、透き通るような蒼に輝いていて、本当に綺麗だったって。」
そうして、そっと泣きぬれた私の顔を離して、力づけるように見つめて。
「もしもわたしがおつきさまなら、ちーちゃんは、故郷の星だね。気づかないかもしれ
ないけど、本当はすごく綺麗なんだよ。」
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