と、勇ましく宣言してみたものの、ミチルが私に残した手がかりは、わずかに星間ラ
ジオひとつと群青色の紙片、だけ。
まず私にできることは、紙片に記された言葉の意味を調べることくらい。
そう思って、授業を聞き流しつつ端末で調べてはみたのですが、結局四つの単語のど
れひとつとして、意味を知ることはできませんでした。
西方の言葉は、移民星ではもう使われていない古い言葉なので、学舎の生徒がアクセ
スできる程度のデータには、体系だった情報は載っていないのです。
しょうがないな、とため息をついて、私は休憩時間にそっと席を立ったのでした。
ミチル抜きで、たったひとりで学舎を抜け出すという初めての経験に、どきどきする
心を抑えながら。
*
教室を抜け出して私が向かったのは、学舎のはずれにぽつりと立つ図書室でした。
灯りを抑えた小さな図書室のいくつもの棚には、端末からは調べられない、古い昔の
ことやおはなしがたくさん、冊子体パネルに収められて眠っていました。
中には、遠い昔の私達の故郷の星のこと、なんかも。
学舎の生徒達は、どこか陰気なこの場所に、あまり寄り付こうとはしなかったけど、
私は、旧い知識が眠るこの図書室の静かな空気がなんとなく好きでした。
もっとも、ここが好きになったのは、ここで古い冊子体パネルを見るのが好きなミチ
ルに、何度も強引に連れられてきたから、なのだけど。
ずっとむかし私達の祖先が住んでいた、故郷の星。
その星に息づく植物や風景のこと、そして、うたが、ミチルは大好きだったから。
授業中ともあって、誰もいない図書室にぽつりと佇んで、私は紙片の解読を始めました。
古い冊子体パネルを調べて、ようやく四つの単語のうち、前三つの意味と繋がりはわ
かったのですが。
最後のひとつ、"moon"という単語。
これだけは、いろいろと冊子体パネルを調べてもどうしてもわからなくて、高い図書
室の天井を見上げて、ふうとため息をついた、その時。
不意に開いた扉の音に、私の心臓が縮みあがったのは、まさにその瞬間でした。
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