目覚めた時のショックで、肩にかけられていたあの人のコートがはらりとずれる。 いつの間にかもたれて眠っていた姉の、規則正しい寝息が微かに乱れる。 あの人は、未だにその細い手で、光を燈し続けていた。 そして、その手に包まれた硝子のプレートの上、そこに『惑星館』が在った。 夜天の、久遠の距離を模倣する、群青色、藍色に息づく半円球の闇。 その頂点へと、周辺へと、あまねく、地上の機械が幾つもの細い光を投げる。 その細い光は、『惑星館』のドーム状の宇宙に、無数の星となって輝いている。 「もう少しで、描きあがるわよ。」 起き上がった私に気づいて、あの人は微笑みかけて言う。 だけど、私はその声も耳に入らずに、ただ小さな『惑星館』を見つめていた。 天球の頂点付近に、きんいろ、ぎんいろ、双つの星。 その星に、輝く線が別の星へと繋がって、綺麗な形を描いている。 その星達に重ねるように、優しい線で、双子の少年の絵姿。 夜空に生き、太陽の通り道に沿って巡る、星の生き物達。 「あなたには、本当に星座が見えるの……?」 先程まで見ていた夢の不安が、まだ私を虜にしていた。 周りから、星々が消えていき、ひとりぼっちで虚空を巡る、惑星の不安。 その不安に駆られて、私はあの人にしがみつく。 「星座は、今でも本当にあるの?みんな滅びたのではないの?」 届いた光が滅んだ星の光だと知った時、『惑星館』の外壁が崩れているのを見た時。 「違うのなら、お願い、僕に星座を見せて!」 そして、星への、あの人への憧憬、希望。 私は、絵を描くあの人を目にしてから、ずっと訊きたかった質問を投げた。 「どうしたの……?」 姉が、私の大声に驚いて、眠たそうな目をこすって呟く。 「……じゃあ、見せてあげましょうか。あなたの、星座を。」 あの人は、質問には応えずに、さらりと巻き毛を揺らして立ち上がった。 双子の星の片割れと同じ、光を保つ、きんいろの髪。 |