そうして、私達は『惑星館』から真夜中の街と戻った。 ドームの外壁に護られた闇の外に出ると、変わらずにあふれる数多の灯りが目を刺す 。 家々、エアカー、店に飾られたウィンドウ、街灯。 街では、人の灯りは、決して絶えることがない。 まるで、終わりのない夜に居るように。 深い夜の底 誰もがじっと 暗い行く先を 見つめてる 世界中のあかりを あつめてもぬぐえない 重いブルー その灯りの中を泳ぐように、微かな歌の声。 それは、あの人の高い声ではなくて、姉の呟くような歌声。 「かなり歩くけど、大丈夫?」 一度だけそう訊いたきり、あの人は何も言わずに、ただ灰青色の空を見上げて歩いている。 夜天に、ただ一つだけ微かに輝く光を、軌道の道標にして。 その沈黙が、夢から覚めた私の心に、気まずさと、ほのかな期待の色を彩けている。 きっと今夜が 永遠の夜のはじまり かたく かたく ひざを抱いた手が ほどけない あの人は、私達を街の外れの方へと導いてゆく。 普段、子供達だけでは入り込まない、街の外周部へ。 やがて、街の明かりは少しずつその数を減らしていく。夜に溶けるように、 一つ、また一つ。 その代わりに、柔らかい空気がさらさらと、髪を、頬をなではじめる。 それは、夜風、だった。 気候制御フィルタの力が及ばなくなる外周部には、街の外から、風が吹き込んでくる。 鉱気を含んだ外からの風は、あまり当たり過ぎると身体に悪いと言われている。 だが、実際に軽い音をたてて流れているその空気は、はやる心を宥めるかの様に、 ゆるやかで、優しく感じる。 |