その日は、本来なら何事もない、いつもと変わらない一日のはずだった。 もしも、二つの偶然が重なることがなかったら。 一つめの偶然は、たまたまこの街に届いた、遠くて、淡い光。 それは、灰青色の合成繊維のような夜空に、ぽつりとにじんだひとつぶの水滴の ように、ぼんやりと浮かんでいた。 水色の通信片が毎日受信する、関わりなく過ぎてゆく日々の事件。 その一番最後に、ほんの数行だけ、その光のことが載っていた。 淡い光は気候制御フィルタの異常ではなく、超新星の影響によるもの、との報告。 そして、フィルタの遮光の調整に数日を要するとの通知。 おそらく、大半の人はこんな記事には目も留めなかったに違いない。 そして、もう一つの偶然。 それは、普段はニュースなんか見もしない私の姉が、 何の気まぐれか、しっかりその記事を読んでいたということだ。 |