「ねえ、起きてるんでしょ、開けてよ。」 その夜、姉は妙にはしゃいだ声で、私の部屋の扉を叩いた。 無視を決め込んでも、いっこうに諦めずに叩き続ける姉にため息をついて、 私は部屋の扉を開けた。 「何だよ、ねえさん……。」 露骨に面倒くさそうな私の態度を意にも介さず、姉ははしゃいだ声でせっつく。 「鍵貸して。おじいちゃんの『惑星館』の鍵。」 「こんな夜に、何であんなとこに行くのさ?」 胡散臭い、という気持ちを隠さずに私は訊ねた。 姉がこんな声の時は、大抵ろくなことは考えていないと経験で学んでいるのだ。 「決まってるでしょ、生まれた星を見に行くのよ。」 「……何それ?」 私は、思わず目を点にして訊き返した。 「何よ、あんた通信片読んでなかったの。『超新星』って書いてあったじゃない。」 私の態度を心外とばかりに、さらに声を高くする姉。 「ばっかみたい。」 私は、そんな姉に、思いっきり冷たく呟いてみせた。 「超新星は、死んだ星のことだよ。」 ため息をつきつつ、私は机の引出しの奥から、一枚のプレートキーを取り出す。 「お前が、いつかきっと星座を見れるように、この鍵が見守ってるよ。」 亡くなる直前に、祖父がこう言って私に託した、小さな真鍮の鍵を。 |