星狩り 〜Better Days Moon〜
不思議なお客さんが、お店に来た日。
それは、いつもとは違う、二度目の月祭りの日のこと。
だけど、いつもと同じ、幸せなある日のこと。
潮風が、海と村とを行き来する、ちょうど通り道。
小粒の結晶を含んだ白い砂浜と、黒く静かに広がる地面の、ちょうど境目あたり。
そこに、転がりおちて半ば埋まった月のように、小さな織物の店がありました。
その店の建物は、ずいぶん古めかしい造りでした。
「機械」と呼ばれる不思議な道具達が動いていた、もう、忘れられた時代。
そんなずっと昔から、この建物は、海岸に埋まっていたのです。
冷たくて白い、金属のような繊維で作られた、なめらかなの手触りの壁。
その白い壁が、ゆるやかなカーブを描いて、まんまるい半円球をかたどっています。
それは、村の方から歩いてくると、半分に欠けたお月さまが波打ちぎわに落ちているように見えました。
ただし、上弦でも下弦のお月さまでもなく、丸帽子のように頭を上にして。
そして、ちょこんと日よけのようにくっついた、手作りの小さな店先。
だから、このお店は、「月帽子織物店」と呼ばれていました。
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