織物店の外側のお月さまは、ようやく東の群青色の空に昇りはじめていました。 内側のお月さまが、東から西へ、ゆっくりと、あっというまに巡った間に。 「やっぱり、変わってないんですね。」 そして、大きな宇宙の小さな鉱石達は、変わらない星座のかたちを紡いでいるのでした。 永い時間をかけて、人から人へと変わらずに語り継がれた、星の描くかたち。 くっきり見えた時代も、ぼやけて見えなかった時代も、変わることなく。 絶え間ない波のリズムと、村から遠く聴こえる、お祭りの音楽だけが流れるなか、二 人は海岸の方へと歩いていきました。 お祭りの月を見上げながら、何も、言わないままで。 そのまま、波穂が砕けて砂に溶ける、波打ち際が見えるところまで来た時のこと。 ふと気付くと、たくさんの小さな輝きが、ちらちら、踊っていました。 満ちては引く海の呼吸に揺られながら、まるで天の星達を映したように。 「……たいへん、籠持ってこなくちゃ!」 急に慌てて、女の子は「月帽子織物店」に駆け戻っていきました。 残された娘は、波打ち際に降りて、細い指でそっとその輝きをすくい取りました。 ひやりと心地よい、夜の海の体温。 手のひらで、お月さまの光を受けてぴかぴか輝くそれは、星型の、透明で細やかな砂 でした。 女の子の織り込む夜天の織物で輝く、海に降りた星達。 それは、この十三夜のお祭りの夜に、波打ち際をその輝きで煙らすのでした。 まるで、天の川のように無数に集まって、たゆたう波にころころと転がりながら。 「きっと、あの『機械』を作った人も、同じだったんですよ。」 籠をかかえて、息を切らして、頬を真っ赤にして、戻ってきた女の子が言いました。 「だって、私も、自分だけの星空作るの、大好きだもん!」 |