星狩り 〜Better Days Moon〜




 風に乗って月祭りの、陽気なダンスの音楽が聴こえていました。
 その音楽と波穂のリズムに合わせて、楽しそうに女の子は星砂を捕まえるのでした。


 「それにしても、こんなにたくさん星砂が落ちてるのって、はじめて!」


 そんな女の子の興奮した声に、ようやく悪戯っぽい微笑みを取り戻して。


 「だって、今日は、月祭りの日、でしょう?」


 そうして、ダンスの音楽に合わせて、楽しそうに海風に歌声を乗せるのでした。


   ポンパドールくるくるり 
   糸まき からめて
   もっともっと輝いて満月

   ほら ガラスの魚が
   まぶたを泳げば
   左手で招く猫の目 きらきら


 群青に広がる夜空には、変わらない天の星座達。

 絶え間なく満ち引きを送る海辺には、ころころと動く地上の星座達。

 そして、十三日のお月さま。


 今日は、月祭りの夜。

 女の子は、夢中で星を捕まえて、『機械技師』は歌を紡ぎます。


   この銀河の星くずのぜんぶ
   ひとりじめにしたいむすめ
   かごのふたは あふれそうなのに
   背伸びしては まだ足りない

   空の高さ分の 心は遠い淵
   迷いこんだ夢から もう二度とは出られない


 星のめぐりのように、ずっと変わらない日々。
 
 忙しかった日、何もなかった日。
 
 大好きなものを作る日、大好きな人に出逢えた日。



 今日は、月祭りの夜。

 一年の、そんなたくさんの幸せな日を、十三日のお月さまに寿いで。



 「あさっても、幸せだといいなぁ。」


 籠の中を星砂でいっぱいにして、浜辺に座ってお月さまを見上げて、女の子がぽつり
と呟きました。


 「あした、じゃないの?」

 そんな呟きに、不思議そうに尋ねる『機械技師』の娘。



 「あしたはもう、充分幸せに決まってますもの。」


 娘のまねをして、悪戯っぽく微笑みながら、女の子は満足そうにそう答えるのでした。






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