九の月と十の月の、十三夜のお月さまの日。 村では、その年の収穫と平穏を祝って、輝く十三日の月の明かりのもとでささやかな お祭りが行われます。 ほかほかの焼き菓子や、透きとおる色とりどりのキャンデイ、果物を漬けた甘いお酒。 お祭りの夜には、普段味わえない、特別なお菓子を売るお店が通りに立ち並びます。 そして、村の広場では、心踊らせる音楽とともに、大勢の人達がお月さまを囲んでダ ンスを踊るのでした。 くるりくるり、今日の幸せを楽しんで、音楽に合わせて軽やかに廻って。 そんな時、肩にかけた夜天の織物は、月影を浴びて輝きを散らしながら、ふわりとた なびくのでした。 まるで、ミニチュアの流星群を身に纏ったかのように。 だから、女の子はずっと休まずに織物を織っていたのです。 今宵の、月祭りの夜を楽しみにするお客さんのために。 がんばって何とか織り終えた「星砂」の織物たちは、昼間のうちにみんな引き取られ てゆきました。 夕闇が訪れても残ってる、このたった一枚を除いて。 「もう、お店閉めて行っちゃおうかしら。」 女の子にとっても、月祭りは年に二回の、特別な日でした。 だって、心をこめた織物を、羽織って踊ってくれる人を見るのは、本当に幸せなこと でしたから。 でも、まだ慌てて織物を取りにくるお客さんがいるかもしれないと思うと、やっぱり 気になってしまうのでした。 |