「わぁ……すごい……。」 白い丸帽子の中で、控えめながらも響く、澄んだ驚きの声。 半円球に模られた、遥か昔の建物の中心に。 あるいは、「月帽子織物店」の女の子の、いつもの作業場のまんなかに。 黒い金属でできた複雑なかたちをした、昔の「機械」が眠り続けていました。 「私は……『機械技師』、です。」 ちょっと考えて、聴き慣れない言葉で名乗った、白い衣の娘。 その何処か不思議な雰囲気につられて、女の子はつい娘を招き入れてしまったのでした。 「最後のお客さんがきて、お店を閉めるまででいいですか?」 しっかり、そう付け加えることは忘れずに。 半円球の円周の一部は、時によって削り落とされていました。 まるで、月の端っこだけ雲に隠されて欠けたように。 そのかけらが、良い明かり取りの窓となって作業場に光を差し入れています。 夕日とも月ともつかない、薄く水でのばしたような、夕凪の時刻の光。 そのさらさらとした光を受けて、「機械」は黒曜石のような輝きを映していました。 幾つかの丸硝子をはめこんだ、何処か愛嬌のある双つの球体。 そのふたりを繋いだ、精巧な細い金属の神経、音を立てて廻りそうな歯車。 ドームの外の、遠い空を見るように、斜め上空を向いたままで。 |