星狩り 〜Better Days Moon〜




 半円球の作業場の端っこには、金属製の少し斜めにかしいだテーブルがありました。

 その表面に並んだ、奇妙な丸ぼたんや上下に動く小さな棒は、このテーブルも「機械」
のひとつであることを物語っていました。


 でも、この「機械」も、今は女の子のお茶用テーブルという、れっきとした役目を果
たしているのでした。


 「毎日忙しくて変わりのない日でも、ここでお茶を飲むとほっとするんですよ。」

 ほわりと流れる白い湯気と、優しい時間。
 テーブルの前には、よりそう織り機と眠る機械。


 「やっぱり、兄弟みたい。」


 そう、娘がつぶやいた、その時のこと。

 テーブルの片隅のボタンが、不意にちかちかと点滅したのでした。
 まるで、ここにいるよ、というように、波のように等しいリズムの、碧色の光で。


 「ねえ、こんなこと、今までにあった?」

 驚いて尋ねる娘に、女の子は首を横に振ります。


 「この子……もしかしたら目を覚ますかも。」




 かしゃん、かしゃん。

 ぶら下がっていた灯火が音をたてて落ちて、半円球の中が闇に包まれます。
 天井に開いた欠けらから射し込む、薄い月明かりを除いて。


 娘の押したボタンで眠りから醒めた「機械」は、ゆっくりと双つの球体を回転させます。

 錆び付いた歯車をかきならして、まるで射し込む月明かりを見上げるように。

 しゅるしゅる、からからと、つられて廻る蒼の糸と織り機と一緒に音を奏でて。


 そして、丸硝子から、半円の天球に向けて、数多の淡い光を放ったのでした。







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