「わぁ……すごい……!。」 歓声をあげて、女の子はドームの中心にかけよりました。 見上げれば、瑠璃色、緋色。冷たい白の光、暖かい橙の光。 無数の、細かな鉱石のような輝きが、今は闇に包まれた天井全体に散らばっています。 その幾つもの光の全てを、あの女の子の「機械」が燈しているのでした。 永い時間を超えて、小さな、織物店の半円球の宇宙に向けて。 「やっぱり、兄弟だったのね。この子達。」 『機械技師』は、黒曜石の様に輝くふたつの球体を見つめてつぶやくのでした。 「ふたりとも、星空を織りなす道具だったんだ。」 東側の壁には、わずかに欠けた円盤型の、強い輝きが昇り出していました。 ちょうど、たったいまこの店の外にあるのと同じ、十三日目の祭りの月。 「ずっと変わらないものって、あるんですね……。ほら、織姫の星。」 女の子が、明るい三角形の頂点を指して呟きました。 薄くきらめいて流れる夜天の川。白鳥の形、琴の形、七つ星、北天の動かない星。 白いドームの壁面を隔てて、双つの宇宙は全く同じ星の形を紡いでいるのでした。 ずっと変わらないままで、時間の糸車を回し続けて。 やがて、内側の宇宙は「機械」の歯車の音を伴奏にして、ゆっくりと回転を始めました。 外側の宇宙と離れて、徐々に天頂に昇る十三夜のお月さま。 「外に出ればいくらでも星空が見えるのに、どうしてこの子を作ったのかしら。」 テーブルの点滅するボタンを操作しながら、『機械技師』はそっとつぶやきました。 「あら、私にはわかるわ。」 ゆるりと巡る夜天からくるりと振り向いて、少しはずんだ口調で女の子は応えました。 「きっと、星を捕まえて、自分だけの手で夜空を作りたかったんですよ。」 |