窓から射し込む光に気がついて、娘は目を覚ました。
暖炉の灯の暖かさに身を任せて物思いに耽る内に、うっかり眠り込んでしまったらしい。
先程までの雨は止んで、微かに射し込む夕方の光が、暖炉の灯とは別の輝きを家の中
にもたらしていた。
娘は、その光に微かに微笑みかけ、外に出ようと、肩に羽織っていた毛布を外して立
ち上がった。
カランカランと、乾いた金属音がして、何かが木の床に転がった。
(なんだろう?)
予期せぬ物音に驚いて、娘は床に眼を走らせた。
そこに、小さな錫製の笛が転がっていた。それは暖炉からの赤い光を受けて、赤銅色
の鈍い輝きを放っていた。
「……ありがとう。」
娘は笛を拾い上げ、胸元で強く握りしめ、言った。
「ちょっと借りるね。」
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