すこし息が切れるくらい、坂道を登った丘の中腹にある、小さな分校。
でも、久しぶりに丘を登ってきた今の私にとっては、「丘にあった」と言ったほうが
正しかった。
「そっか……、もう取り壊しちゃったんだ。」
ぽっかりと、不自然に開いた、ちいさな空き地。
わずかに赤茶色のくすんだ煉瓦に囲まれた、ささやかな花壇の名残には、今は何も咲
いてはいない。
傍らに積まれた、かつて教室の床板だった、樹の切れ端。
私の胸の内に、あの三拍子の音楽の悲しみが、二月の空気のように流れる。
私は幼い頃、ここよりもさらに山に近い村落に住んでいて、ずっとここに通っていた。
先生一人と、一年生から六年生までで1クラス分の生徒の、この小さな分校に。
大好きだった先生が亡くなって、ここが閉鎖されるまで。
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