「どうして、泣いているの?」 不意に真下から呼びかける声に、泣きじゃくったままびくっと身を震わせるわたし。 見下ろすと、知らない男の子が、ほんわりとした顔で、わたしのことを見上げてた。 「あなた、誰よ。関係ないならほっといてよ。」 泣いてるところを見られた恥ずかしさ半分に、憎まれ口のわたし。 「だって、桜の樹が、女の子が泣いてるって、教えてくれたから……。」 少し、困った顔でつぶやく、見知らぬ和服の男の子。 「……歌がへたっぴぃだって、みんなに言われたの。いいもん、もう歌わないから。」
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