「今回は、マルチに頼んでみようかな」
「はいっ、お任せください。ついにわたしの、レーダー
が役に立つときがきました」
「レーダー?」
「はいっ。100円玉は主に…え〜と、ニッケルから
出来ていますから、周辺の画像からガンモ…じゃなく
てガンマ線スペクトル分析でニッケルの周波数を探し
出せば、なんとか見つかりますっ」
 マルチは、なにやら訳の解らない言葉で力説する。

「…オレにはさっぱり意味が解らんぞ」
「実は、わたしもよく解りません」
「おいおい…」
 オレはズッコケそうになった。
「ですが、最近のメイドロボには標準装備らしいです」
「装備してる本人も、よく解ってない機能かぁ?」
「はあ…でも、頑張って探しますっ!」
「お、おう」

「それでは、探査開始!」
「……」
 マルチが言い、オレは彼女の行動を、固唾を飲んで
見守る…。
 …じっと周囲を見渡すマルチ。
 きっと、レーダーが周囲の状況を探っているんだろ
う…と思う。
 1分ほど立つと、今度はしゃがみこんで、コンクリー
トの上を見回し始めた。
 仕舞いには、自販機の下とかも覗きだす。
「…なあ、それって、目で探してねえか?」

「すみません。わたしには、レーダー分析機能はない
みたいです…」
「あのなぁ…」
「でも、ご安心を。わたしには、高性能CCDカメラ
がありますっ」
 とか言いながら、四つんばいで探し回られても、ちっ
とも説得力がない。
「…なあマルチ。手伝おうか?」

「いえ、浩之さんはのんびりしていて下さい」
「でもなあ…」
「ちょっと失礼します」
 マルチが、オレの足下も調べ始めた。
 邪魔にならないように、どいてやる。
「…あっ、ありました!」
「どこだ!?」

「浩之さんの足元です」
「…ホントだ」
 どうやら、オレがずっと足で踏んでいたらしい。
「よかったですね」
「ああ。助かったよマルチ」
「……」
 先輩も『よかったですね』って言ってる。
 それにしても、心なしか先輩が寂しそうに見えた。

「これからも、探し物はわたしにお任せ下さいっ」
 先輩とは逆に、嬉しそうなマルチ。
「そうだな」
 100円は見つかったけど、寂しそうな先輩が気に
なってしまった。
 魔法で探してもらった方が良かったかも…。


 昼休み

喜ぶ顔が好き

 5時限目の休み

マルチのアソコ

 5時限目の休み

ぶつかりそう

 放課後

エアホッケー対戦