シャーリーの肥育実験が始まって半月が過ぎたが、
はっきり言って順調、と呼ぶには程遠い状態が続いている。
まずシャーリーは太りにくい体質だった。
その上小食で胃も小さくすぐに満腹になってしまう。
更に悪い事に拒食症になってしまった。
どうも「太ったら殺される」と思い込んでいるらしく、
それが精神的な負担となっているようだ。
私としてはシャーリー個人が太る事をどう考えていようが
問題ではない。ただ順調に食べて太って欲しいだけだ。
あまりやりたくなかったが仕方が無い。
私は強制給餌を行う事にした。
餌は配合飼料を牛乳で溶いた物で、思い切って糖度を高くしておき
せいぜい高カロリーにしてやる。
ついでに隠し味として精神安定剤を少々。おっと入れ過ぎた。
でこれをホースで直接胃に流し込む訳だ。
暴れると面倒なので拘束具を使い、仰向けにした口にそろそろと
ホースを入れていく。
「がふっ・・・げほ・・・」
吐き出しそうになるシャーリー。目の端に涙があふれ、
嘔吐感で喉がしきりに上下する。
飼料を流し込むと見る見るうちに胃が膨れ上がり、
痩せた体にぽこんと小さな膨らみが出来る。
2リットルも流し込めば十分だ。ホースを引き抜いて
拘束具を外すと、シャーリーは脂汗を額に浮かべてその場に
崩れ落ちる。
こうして徐々に胃拡張を続けていけばそれなりの量を
食えるようになるだろう。
精神安定剤が効いてきたのか目がとろんとしてきている。
「わ、私・・・」
「しゃべらなくていい。囲いに運んでやるから心配するな。」
私は飼料の分だけ重くなったシャーリーを抱え、研究棟とは
別にある彼女の囲いへとゆっくりと歩き始めた。