受け身でいては何も始まらない

7/20/99記

 海に行く。スクーバダイビングに行く。これらの響きは当然ながらアウトドアであり、自然を満喫しようという範疇である。家でTVのチャンネルを変えて面白そうな番組を探して眺めるのとは明らかに異なる。TVの場合はつまらない番組に対して文句を言っていれば良い。完全に受け身でしかないためである。つまらない番組は見なければいい。アウトドア活動の面白味は、interactive性にあると思う。もちろん海も然りである。つまらない海には行かなければいいのだ。なのにダイバーの中には、まるで受け身なのがいる。ガイドの後を付いて行き、ガイドの指差す生き物を見て、生物の名前を教えてもらって、ガイドに残圧チェックしてもらい、はたまたオクトパスからエアーまでもらっておきながら...挙げ句の果てには「今日のダイビングはつまらなかった」とつぶやくのである。

 せっかくの休みに時間をかけて遠くから海に来て、文句ばっかり言ってる奴がいる。透視度が悪かった、寒かった、魚がいなかった、などなど。期待外れってことはあるにしても、あるがままの海を受け入れることはせずに、自分の描いていた期待と何が違うのか分析するのだ。これは「楽しいダイビングをしに来ている」とは到底思えない、私にとっては非常に理解に苦しむ行動なのだ。季節、場所によってダイビングの内容がかわるのは当たり前。秋に来た時にはウジャウジャ魚がいて良い印象を持っていて、春に来たら味噌汁だわ魚はいないわで「つまらなかった」とつぶやく。そういうものだってことが分かっただけでも体験できただけでもプラスなのに、ネガティヴ思考は留まることを知らない。情報を集めてから味噌汁の海に行ったのか?ショップのスタッフの「まあ大丈夫だよ」とか現地サービスの「おいしいとこばかり」の情報のみを鵜呑みにしていなかったか?反省することも大事である。近ごろはwebで本当に欲しい情報が相当得られるはずである。

 自分で楽しもうと働きかけているのか?という問いがまた頭を過ぎる。少し働きかけるだけで楽しみはどんどん増えるのに。自然を満喫しようというのに自分で自分の感度を下げて、人が見せてくれるものだけを見るつもり?自分でイザリウオやヤマドリを見つけられた時、そしてそれを皆にみせてあげた時、嬉しさが全然違うんじゃないの?ダイビングに限らず初心者の頃の感激は、経験を積むにつれて薄れるものだ。とにかく水の中でタンクから空気を吸っていることが幸せ、みたいな時期あったでしょ?常に新しい何かを意識的に設定しないと、どんどんグチばっかりの自他共にヤナ奴になっちゃうよ。文句を言うのは経験者のように見えてカッコイイと誤解しているのだろうか。遊びなんだから自分がまず楽しくなくちゃ始まらない。そうでないと本当にダイビングがつまらなくなると思う。難しいことを求める前に、まずは自然に対して謙虚になることから初めて、ガイド完全依存症のような「受け身」の姿勢からの脱却を考えても遅くはないと思う。


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ドリフトダイビングは初めてのファンダイブでは危険か?

08/27/99記

 パラオや神子元は初心者にとって危険なダイビングサイトである、等という記載を見たことがあるし、聞いたこともあります。ドリフトで有名なポイントが多いためでしょう。ドリフト=危険、というのは、式が短絡し過ぎていて、中身をもっと見てみる必要がありそうです。

 本当は流れの程度によって随分と見解が変わるはずですが、まずは最もヤバそうな激流パターンを想定しておきます。

 ドリフトに慣れている人は、危険性は相当下がると思います。要は慣れていないことから来る恐怖感、これを自分で評価基準にすべきでしょう。ガイドやインストラクターに大丈夫かどうかを決めてもらうのはオカシイことですよ。あなたは何本潜っているから大丈夫!と言われても、ドリフト始めてだったら、それなりに緊張するだろうし、パニックになるかも知れない。その状況で自分で行くか止めるかを判断できるようにガイドなりインストラクターなりは、ドリフトダイビングの中身をきちんと説明し、地形、コース、最大水深、時間、エントリーエグジットの方法、流された時、はぐれた時の対処方法をお茶を濁すことなく明快に伝える義務があると思います。きちんと伝えないガイドだと、いくら中級でも特にドリフト慣れてなかったら危険になるかも知れないと思います。商業的に宣伝を伴う場合にはネガティブな要素を敢えて隠すとまで言わなくても、広告とかにはでてこない恐れがあります。ギンガメアジに巻かれる、とか、ハンマーヘッドの大群とかの写真や記事はあっても、その中に、流れに顔を向けるとパージボタンが押されてエアが漏れるほど強い流れの時がある、とか、そんな時は横を向くと、エグゾーストティーから海水が流れ込んでくる、マスクを引き剥がされそうになるから気をつけろとかスノーケルが耳元でブンブン鳴るとか、前もって教えといてくれないと、始めてこういう体験をすると結構ビビるものだとおもいます。

 表題の質問に対して、初めてのファンダイブを行なおうとするダイバーが自分で大丈夫かどうか判断できるはずも無いので、答えは簡単にYESになってしまいます。いつもよりも余計に流れというリスク要素が加わっているために、安全サイドから遠ざかることになるのだということを強く認識すべきだと思います。それじゃあ、せっかくパラオに行ってもボートの上で待ってないとだめかというと、事前の交渉次第だということになります。せっかくパラオだから、流れガンガンに行かなければ...という発想は絶対に止めて欲しいと思います。事故を起こして、死なないまでも多数の人に迷惑を掛け、自分も不愉快な思いをし、ってことを代償にしないでください。遊びに行くのでしょう?スリルを楽しむなんて考えは大間違いです。遊園地等の恐怖の乗り物は、ほとんど絶対に近い安全性が確保されているから、スリルを楽しめるのです。自然の恐怖には安全性は全く保証されていないのですから。

 現地サービスに対しては、前もって事実関係を正直に伝えておくことがどれほど重要なことかを知ってください。安全のためだけじゃなくって、より海を楽しむためにも、自分が初心者だが、安全にドリフトダイビングできる場所があるかどうかを聞いておく。時期や時間帯によって流れの強弱もあるでしょう。そして前もって大丈夫なコンディションのポイントをリクエストしておく。現地でも再確認をして、実際のガイドにも念を押すこと。万が一、事前に連絡できなかったとか、何かの手違いでとかで、いかにも慣れた人向けの流れの早いポイントに入るはめになった時には、勇気を持ってNOと言いましょう。ブリーフィングでそれが分かってしまう場合には、ポイント変更を要求すべきだし、もし聞き入れられないなら潜るのを止めましょう、料金返せくらいなことを言ってもいいでしょう。絶対に見栄を張ってベテランの振りをしてはいけません。客が行きたくないと言ってる所に潜らせる訳にはいかないという考えは常識でないことが海外でなくても目に付くことがありますので、困ったものです。皆んなについて行けば何とかなるだろうとは決して思わないで下さい。日本人の取り易い思考パターンですが、納得いくまで分からないことを正しましょう。英語が聞き取れなれば日本人に分かるように喋れ!俺は、私は英語を母国語としない日本から来たんだぞって言ってやりましょう。って英語ですらすら言えるくらいなら聞き取れないってこともないのでしょうけど...うーむ、いい策が無い。

 それでもどうしてもNOと言えなくてエントリーしてしまっても、ガイドに自分は初心者だ、とかドリフトは恐いとか言っておけば、多少は他のダイバーに比べて気にかけてくれるだろう(あくまで「だろう」)から、恐れは低減されるかも知れません。「だろう」を自己暗示に使って安心して潜るなんていうのは緊急時に全く無力になるのでお勧めできません。海外に行く人は「恐い」っていう英語すぐ出ますか?scary[発音は辞書で調べてね]を覚えておきましょう。アメリカでは3歳の子供でも使っていますが、日本人には余りなじみが無いようなので。Are you OK?と聞かれてScary!!と叫べば、ガイドに伝わらなくても、英語の分かる周りのだれかが、この人は怖がっているじゃあないか!と言ってもらえる可能性があります。どんどん話しが逸れて行くのでこの辺で戻します。

 ドリフトでなければ見れない魚がいるのも確かですけど、そういうレアな魚は、ダイビングを長く続けて一度もお目にかかったことがなくてやっとのことで出会ってはじめて感動ひとしおとなる訳です。魚の名前も良く分からない、すなわちレアなのかどこででも見られる魚なのか区別がつかない内に見てしまうと、全くありがたみがありません、というのは副次的な理由です。もう一つの大きな理由は、ドリフトはパーティ全員で行動(潜行開始から浮上まで)をという鉄則が守られないケースがほとんどだから、なのです。ガイドが指示すべき事なのですけど。漂流、遭難するケースが事故の例で多いのはこの鉄則を守らない/守るように指導や指示をしない側に問題があるのは明らかです。裏を返せば、鉄則を守るんだったら、初心者でも安心です。

結論:中級になってからドリフト行けばいいじゃない!初級で行っても恐い思いをするだけだと楽しくないよ。

後日談:自称初心者KTさんの弁「今は通常ダイブでも魚を見る暇が無いのでドリフトダイブをしても、楽しめないです。きっと。」うーむ、そうかも知れません。

余談:ドリフトのポイントに入っても潮止まり等で流れてなくって、なあんにもいなかった!という悲しいダイビングになってしまうこともあり、これもまた自然の仕打ちorサービスや船長との打ち合わせ不足。


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まだまだ構想を練っています。取り上げて欲しい題材はリクエスト下さればできるだけ善処したいと思っています。

リクエストはこちらまでどうぞ。